多食品アレルギー製剤「ADP101」の効果と安全性は?:Harmony試験

経口免疫療法を多数に一度に進めていくことは可能か?

食物アレルギーは現在、世界中で増えている深刻な問題です。

■ 特に複数の食べ物にアレルギーがあると、日常生活が大変になります。まず、間違って食べてしまう危険性が高くなりますし、避けなければいけない食べ物が多くなれば栄養不足になるリスクもあります。何より、患者さんとその家族は心配を抱え、外食や友人との食事も制限され、社会的に孤立しがちになるでしょう。

■ これまでの食物アレルギーの対処法は主に2つでした。
・アレルギーを起こす食べ物を完全に避ける
・アレルギー反応が起きた時の応急処置を覚える
です。
そこに、
特定の食べ物に対する経口免疫療法が治療法として浮上しています。しかしリスクは少なくなく、現状では標準療法とはいえません。そのため、オマリズマブという生物学的製剤が安全性を高める方法として提案されるようになってきました(オマリズマブは、2025年7月現在、日本では保険適用なし)。

■ 経口免疫療法というのは、アレルギーを起こす食べ物を少しずつ食べて体を慣らしていく治療法です。この方法は実は1908年という昔から知られていましたが、最近になって、さまざまな研究で効果が確認されるようになりました。
■ しかし、現在のところ、米国でも承認されている経口免疫療法の製剤は、子どものピーナッツアレルギー用のもの1つだけであり、そもそも日本ではまだ導入されていません。つまり、複数の食べ物にアレルギーがある人への治療法がない状況です。

■ 近年、この問題を解決するために、複数の食べ物に同時に対応する治療法の研究が活発になってきました。実際に、ある研究では、1〜18歳の患者90例で平均3品目(最大6品目)の経口免疫療法を同時に開始し、全体の75%が維持量に到達できることが報告されています。

Kim Nguyen, et al (2023). Safety of Multifood Oral Immunotherapy in a Pediatric Population (CHOP Single-Center Cohort). J Allergy Clin Immunol Pract, 11(6), 1727-1734.

■ これまで研究では、市販の食品を使って複数の食べ物に対する治療を試みることもありましたが、市販品では成分の量が一定でなかったり、品質管理が難しかったりという問題がありました(もちろん、安価であるなどの良い点もあります)。

■ そこで開発が進んでいるのが「ADP101」という製剤です。これは世界初の複数食物アレルギー治療薬で、15種類の代表的なアレルギー食品(ピーナッツ、牛乳、卵、魚、各種ナッツ、エビ、大豆、小麦など)のタンパク質を同じ量ずつ含んだ、医薬品として厳格に管理された粉薬です。

■ この研究は、そのADP101が単一の食べ物だけでなく、複数の食べ物にアレルギーがある人にも安全で効果的かどうかを調べるために行われました。Harmony試験というかわいらしい名前になっていますが、まだ第1/2フェーズですので、これからの検討ではあるものの、実際にはどんな結果だったのでしょうか。

Kim EH, Carr WW, Assa'ad AH, Gogate SU, Petroni DH, Casale TB, et al. ADP101 multifood oral immunotherapy for food-allergic patients: Harmony phase 1/2 randomized clinical trial. J Allergy Clin Immunol Glob 2025; 4:100382.

4〜17歳の食物アレルギー患者73名を対象に、多食品経口免疫療法薬ADP101(低用量1500mg/日または高用量4500mg/日)を40週間投与し、その有効性と安全性を評価した。

背景

経口免疫療法は、アレルギー疾患において免疫系を脱感作する確立されたアプローチであるが、現在承認されている唯一の製品はピーナッツアレルギー用である。
■ ADP101は、単一または複数の食物アレルギーを同時に治療するために開発中の、新規の医薬品グレードの多食物経口免疫療法であり、15種類の食品からのアレルギー性タンパク質をタンパク質重量で均等に含有している。

目的

第1/2フェーズHarmony試験(NCT04856865)は、ADP101に含まれる1〜5種類の食品に対する適格アレルギーを有する参加者におけるADP101の有効性と安全性を評価した。
■ 適格者は、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)における≤100mgの負荷用量で用量制限症状として定義された。

方法

■ 参加者は低用量(1500mg/日;食品あたり100mgタンパク質)または高用量(4500mg/日;食品あたり300mgタンパク質)のADP101、または適合プラセボに無作為化された。

■ 用量漸増に続いて40週間にわたる毎日の維持投与を行った。

主要評価項目は、第40週のExit DBPCFCにおいて単一の適格食品の≥600mg負荷用量を用量制限症状なしに耐容した参加者の割合(すなわち、レスポンダー)であった。

結果

■ 主要解析集団(4〜17歳の小児参加者61名)において、高用量ADP101群(55.0%)および低用量ADP101群(38.1%)の両方で、統合プラセボ群(20.0%)と比較してより高い奏効率が観察された(名目P値 = .048、P = .306、それぞれ;多重比較調整後、P = .097、P = .306、それぞれ)。
■ 複数食物アレルギーを有する個人では≥2食品への脱感作が観察され、600mgを超えるレベルでの脱感作も観察された。
■ ADP101治療参加者は皮膚プリック試験反応性の全体的な低下を示し、試験された大部分の食品で
最大耐容用量の増加**が認められた。
■ 有害事象は主に軽度または中等度であり、生命に関わる事象や死亡はなかった。

結論

■ 本研究は主要評価項目を満たさなかったが、ADP101は良好な安全性プロファイルを示し、単一または複数の食物アレルギーを有する小児参加者において複数の評価項目にわたってDBPCFCでの反応閾値を上昇させ、さらなる臨床研究が必要であることを示した。

 

 

論文のまとめ

 

 

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