「低リスクのピーナッツアレルギーの子ども」の約70%は食べられるようになっている?

食物アレルギーの「軽症患者」は、経口免疫療法を開始するときにすでに食べられるようになっているケースがある?

■ ピーナッツアレルギーに対する「経口免疫療法」は、小児に対する治療法の一つだとわかってきました。そして、この治療法は、アレルギー反応を起こさないよう、ごく少量のピーナッツから始めるのが普通です。

■ 最近、「軽症のピーナッツアレルギー患者にこそ、経口負荷試験が有用ではないか」という研究結果もあります。たとえば、1,132件の日常診療に組み入れた負荷試験では76.1%が摂取でき、多くが実は食べられることがしめされ、特に軽症・低リスク層でOFCの費用対効果が高いとされています。

Mustafa SS, Bress J, Capucilli P, Tuong LA, Denise Sanchez T, Patrawala S, et al. Outcomes of oral food challenges in a real-world setting, with predictors of outcomes. Annals of Allergy, Asthma & Immunology 2023; 131:655-60.

■ すなわち、「もしかして、ピーナッツアレルギーと診断された子どもの中に、経口免疫療法前にはもうアレルギーが治っている子がいるのではないか?」という考えも出てきました。

■ 実際に、他の食物アレルギーでも同様の現象が報告されています。卵アレルギーでは、段階的に少量から中等量へと進める単回量経口負荷試験により、完全除去を避けて「食べられる少量」を見極める取り組みが多施設で検証されており、安全に反応閾値を決定できることが示されています

Yanagida, N., et al (2019). Stepwise single-dose oral egg challenge: a multicenter prospective study. J Allergy Clin Immunol Pract, 7(2), 716-718.e6.

■ また、1歳未満の乳児を対象とした低用量経口負荷試験では、卵・牛乳・小麦において陽性率が低く、重篤な反応も認められないことが報告されており、「乳児ほど危険だから完全除去」という従来の考え方に新たな視点を提供しています。

Mari Takei, et al (2024). Low-dose oral food challenges. Pediatr Allergy Immunol, 35(10), e14258.

■ 一方で、低用量だからといって必ずしも安全ではないことも明らかになっています。牛乳の1-3mL程度の低用量初回経口負荷試験でも、44%の患者が陽性反応を示し、そのうち19%でアナフィラキシーが発生したという報告もあります。

Yuki Sakaguchi, et al (2025). Low-dose oral cow's milk challenge outcome for patients on complete avoidance: A multicenter study in Japan. Pediatr Allergy Immunol, 36(5), e70105.

■ そこで最近、4歳未満の「低リスク」(重いアレルギー反応を起こしにくいと考えられる)子どもに、治療の最初の日に、日常摂取量のピーナッツを食べてもらって、何人が大丈夫なのかが調査されました。

※一般的に、通常量から負荷試験を行うとリスクが高く、あくまで「低リスク」という点があります。また、低リスクであれば絶対大丈夫とも言えません。noteメンバーシップの後半でその検討の情報を述べています。

Gard CN, Sanders GM, Slack IF, Schuler CFt, Freigeh GE, O'Shea KM. Peanut challenges prior to oral immunotherapy demonstrate high tolerance rates in selected patients. J Allergy Clin Immunol Glob 2025; 4:100442.

4歳未満の低リスクピーナッツアレルギー患者16人に対し、従来の段階的な経口免疫療法ではなく、初回治療日に日常摂取量(4000mgのピーナッツタンパク質)まで一気に進める加速的初回用量漸増法を実施し、約3ヶ月間の経過観察を行った。

背景

■ ピーナッツ経口免疫療法(pOIT)プロトコールは通常、初回用量漸増(IDE)日(最初の日の治療)において反応閾値を下回る用量にとどめる。
■ しかし、一部の患者はより多くの量でも反応を起こさないか、実際にはピーナッツアレルギーがない可能性がある。

目的

■ IDE段階で耐容可能な範囲で完全なピーナッツ経口食物負荷試験まで進めていく加速的初回用量漸増(A-IDE)(初回治療日に安全な範囲でピーナッツをより多く摂取させる加速的な方法)に対する、4歳未満の低リスクピーナッツアレルギー患者に対する反応を調べることを目的とした。

方法

■ 4歳未満の76例のpOIT患者の記録をレビューした。
■ ピーナッツでアレルギー反応を起こした既往があるものの、ピーナッツアレルギー検査が経口食物負荷試験失敗の陽性予測率95%未満の患者にA-IDEを提供した。
■ A-IDEでは、患者が用量摂取を拒否するか、何らかのアレルギー反応が生じるか、または負荷試験に耐容する(累積用量:4000mgピーナッツ蛋白)まで段階的に進めた。
■ A-IDEが耐容されなかった場合、患者は通常のpOITに切り替えた。

結果

■ 2022年4月から2024年2月まで、16例の患者がA-IDEに参加した。
11例(68.8%)が累積用量4000mg(1食分相当)に耐容し、実際にはアレルギーがないことが判明した。
■ 残りの患者は軽度の症状を呈したが、アドレナリンを要しなかった。
■ A-IDE後のpOIT開始用量の平均は450mg(標準pOITでは25mgと比較)であった。
■ 維持用量到達まで平均5.2回の受診(標準pOITでは9.7回と比較)で達成された。

結論

■ 以前にピーナッツアレルギーと診断された4歳未満の低リスク患者の約70%がpOIT開始時に1食分のピーナッツを安全に摂取できた。
■ これはOIT開始前に、実際にアレルギーがあるかを確認する検査の重要性を示している。

 

 

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