
牛乳アレルギー経口免疫療法の治療後管理の重要性
■ 牛乳アレルギーは、牛乳に含まれるタンパク質に対して体の免疫システムが過剰反応を起こす病気です。赤ちゃんの頃は約100人中2~8人がこのアレルギーを持っていますが、多くの子供は成長とともに自然に治ります。
■ しかし、治らない人もいて、そういう人は牛乳を飲むと蕁麻疹が出たり、ひどい場合は呼吸困難になったりします。実際、牛乳アレルギーの子供の4人に1人以上が、1年間に1回は救急外来を受診するという報告もあります。
■ 昔は「牛乳を完全に避ける」ことが唯一の対処法でしたが、最近では**「経口免疫療法」**という新しい治療法が開発されました。これは、アレルギーの原因となる牛乳を、ごく少量から始めて徐々に量を増やしながら飲み続けることで、体を牛乳に慣れさせる治療法です。
■ 多くの研究で、この治療法が効果的であることが証明されています。ただし、興味深いことに、牛乳の経口免疫療法は他の食品(ピーナッツや卵など)と比べて、重い副作用が起こりやすいことが分かっています。イスラエルで行われた大規模な研究では、牛乳の治療中にエピネフリン(アドレナリン)注射が必要になる割合が、他の食品の治療より2倍以上高いことが報告されました。
Nachshon, L., et al (2020). Patient Characteristics and Risk Factors for Home Epinephrine-Treated Reactions During Oral Immunotherapy for Food Allergy. J Allergy Clin Immunol: In Practice.
■ また、治療が終わった後も継続的に牛乳を飲み続けることの重要性については、まだ十分に研究されていませんでした。他の食品アレルギーの研究では、治療後に摂取をやめてしまうと、短期間(1ヶ月程度)でも再びアレルギー反応が起こりやすくなることが示されています。
Davis, C.M., et al (2022). Maximum Dose Food Challenges Reveal Transient Sustained Unresponsiveness in Peanut OIT (POIMD). J Allergy Clin Immunol: In Practice, 10(2):566–576.e6.
■ さらに、ある研究では治療を完全にやめた後に偶発的に牛乳を摂取した場合、治療中よりも重篤な反応が起こりやすく、死亡例まで報告されています。
Pouessel, G., et al (2023). Oral immunotherapy for food allergy: Translation from studies to clinical practice? World Allergy Organization Journal.
■ こうした背景から、牛乳の経口免疫療法において「治療が完了した後も継続して摂取することがどれほど重要なのか」を明らかにすることが急務となり、この研究が行われたのです。
※この論文は、オープンアクセスではないため、図や表は提示していません。
Mulé P, Zhang X, Prosty C, Beaudette L, Cohen CG, Chan E, et al. Long-Term Adherence and Risk of Allergic Reactions in Patients Who Attained Milk Oral Immunotherapy Maintenance. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2024; 12:2811-6.e2.
8歳から21歳までの牛乳アレルギー患者50名を対象に、経口免疫療法完了後に週3回以上200mLの牛乳摂取を継続する維持療法の実施状況を、平均4.8年間(最大8.8年間)にわたって追跡調査した。
背景
■ 経口免疫療法(OIT)は食物アレルギーに対する最も普及した治療法として台頭している。
■ しかし、このアプローチの長期的な治療継続率と有効性に関するデータは限られている。
目的
■ OITプロトコールの治療継続率を長期間調べ、アレルギー反応が起こるリスクとの関係を明らかにすることを目的とした。
方法
■ 牛乳のOITを完了し、維持量として1日200mLの牛乳を飲めるようになった患者を対象とした。
■ 半年ごとに乳製品の摂取状況とアレルギー反応の有無を調査した。
■ 反応リスクとOIT維持プロトコールへのアドヒアランスとの関連を評価するため、生存分析を実施した。
結果
■ 研究対象は50名の患者だった。
■ 週3回以上、最低200mLの牛乳を摂取するプロトコールを遵守したのは、コホートの56%のみであった。
■ 一方、治療をきちんと続けた患者では、アレルギー反応のリスクが有意に減少し、アナフィラキシー、医療機関・救急外来受診、アドレナリン・抗ヒスタミン薬投与の使用率も減少した。
結論
■ この研究結果は、食物アレルギーの治療において、決められた量を継続して摂取することがいかに重要かを示している。
■ 定期的に牛乳を飲み続けることで、アレルギー反応を起こさない状態を維持でき、アレルギー症状のリスクを下げることができる。
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