小児アトピー性皮膚炎:デュピルマブvs他の新薬、どれが最も効果的?

アトピー性皮膚炎治療の新時代:子どもたちに最適な薬をどう選ぶ?

アトピー性皮膚炎は、皮膚がかゆくなり炎症を起こす病気です。この病気は主に子どもの頃に始まることが多く、日本でも多くの小児がこの病気に悩んでいます。

■ 従来の治療法としては、ステロイド外用薬や免疫抑制薬などがありましたが、症状が重い子どもたちには効果が十分でない場合があります。そこで開発されたのが、体の免疫システムに直接働きかける「生物学的製剤」という新しいタイプの薬です。

■ アトピー性皮膚炎の原因の一つは、体の中で炎症を起こす情報伝達物質(サイトカイン)が過剰に作られることです。デュピルマブという薬は、これらの炎症物質の働きを邪魔することで症状を改善します。デュピルマブは、先行して使用できるようになった上でバランスの取れた生物学的製剤で、もっとも普及している薬剤ですし、私も使用しています。

■ 最近になって、デュピルマブ以外にも似たような働きをする薬がいくつか開発され、小児にも使えるようになりました。興味深いことに、これらの新薬は同じような仕組みで働くものもあれば、全く違った仕組みで働くものもあります。例えば、ネモリズマブは、かゆみを引き起こすIL-31という物質の働きを特に強く抑える特徴があり、実際の研究でも投与開始から1週間という早い段階でかゆみの改善が見られることが報告されています。

Silverberg, J. I., et al. (2024). Nemolizumab with concomitant topical therapy in adolescents and adults with moderate-to-severe atopic dermatitis (ARCADIA 1 & 2). The Lancet, 10.1016/S0140-6736(24)01203-0.

■ しかし、これらの新薬とデュピルマブのどちらが効果的で安全なのかは、まだよくわかっていませんでした。特に小児では、大人とは異なる安全性や効果の特徴があるかもしれません。そこで、研究者たちがこの疑問を解決するために、メタアナリシスが行われました。

Liao Q, Pan H, Guo Y, Lan Y, Huang Z, Wu P. Comparative efficacy and safety of dupilumab versus newly approved biologics and JAKi in pediatric atopic dermatitis: A systematic review and network meta-analysis. PLOS ONE 2025; 20:e0319400.

18歳未満の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患児2,352名を対象とし、デュピルマブと新規承認された生物学的製剤およびJAK阻害薬の効果と安全性を比較するネットワークメタアナリシスを、4-16週間の治療期間で実施した。

背景

小児アトピー性皮膚炎(AD)に対して新たに承認された生物学的製剤およびヤヌスキナーゼ阻害薬(JAKi)は、臨床治療において新たな選択肢となっている。
■ しかし、最初に承認された生物学的製剤であるデュピルマブと比較して、どの程度効果や安全性が異なるかはまだよくわかっていない。
■ そのため、これらの違いを評価し、潜在的に優れた薬剤を特定するためにネットワークメタアナリシス
が実施された。

方法

■ 本システマティックレビューはPROSPEROに登録された(CRD42024583658)。
■ 2024年10月27日までにPubMed、Embase、Web of Science、およびCochrane Libraryに発表された、18歳未満の患者を対象とした臨床試験を検索・選別した。
■ 質的評価にはRevManソフトウェアを使用し、メタアナリシスはR version 4.4.1を用いて実施された。
効果の測定には、医師による総合的な改善度評価(IGA)、かゆみの程度を数値で表す尺度(NRS)、および湿疹の範囲と重症度を評価する指標(EASI)を用いた。
■ 結果はオッズ比(効果の大きさを示す統計値)で表現し、各治療法の優劣はP-score(治療効果の順位を示す指標)で判定した。

結果

■ この研究では7種類の薬を用いた11の臨床試験、合計2,352名の小児患者のデータが解析された。
■ 結果として、デュピルマブ(300mg)はプラセボと比較してIGA-0/1(OR = 4.68, 95% CI: 2.53–8.63)、NRS-4(OR = 6.75, 95% CI: 3.85–11.86)、およびすべてのEASI評価項目において優れた結果を示した。
トラロキヌマブは瘙痒緩和において最も有効な選択肢である可能性がある(NRS-4のP-score、0.8447)。
ウパダシチニブ(30mg)はIGA-0/1(P-score、0.9414)、EASI-90(P-score、0.9926)、EASI-75(P-score、0.9707)で最良の成績を示した。
■ デュピルマブ(300mg)はプラセボと比較して鼻咽頭炎のリスクが高かった(OR=2.15, 95%CI: 1.04–4.43)。
■ プラセボおよびデュピルマブ(300mg)の両方と比較して、ウパダシチニブ(15mgおよび30mg)では有害事象の発生率が高く、バリシチニブ(2mgおよび4mg)およびトラロキヌマブ(300mg)では上気道感染リスクが上昇した。

結論

小児ADに対して、デュピルマブは依然として高い効果を持っているが、ウパダシチニブ、デルゴシチニブ、トラロキヌマブなどの薬剤も一定の利点を示している。
■ 今後の臨床試験では、安全性についてさらに詳しく調べる必要があるかもしれない。

 

 

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