
寝具への掃除機掛けは、ダニアレルギー性鼻炎を改善させるか?
■ アレルギー性鼻炎は、鼻がムズムズしたり、くしゃみが出たり、鼻水が止まらなくなったりする病気です。 世界では人口の少なくとも10〜30%がこの病気に悩まされており、都市化や大気汚染、生活環境の変化とともに増え続けていることが報告されています。
Bousquet, J., et al. (2020). Allergic rhinitis. Nature Reviews Disease Primers, 6(1), 95.
■ 日本では特に状況が深刻で、2019年の全国調査では、アレルギー性鼻炎の有症率は49.2%と、約2人に1人が何らかの鼻炎症状を抱えていることが明らかになりました。 日本で最も多い原因は「スギ花粉」で38.8%ですが、通年性(一年中症状が出る)アレルギー性鼻炎の原因として、「ハウスダストマイト(ダニ)」も非常に重要です。
Matsubara, A., et al. (2020). Epidemiological survey of allergic rhinitis in Japan 2019. Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho, 123(6), 485-490.
■ 実際、福井県の小学生を対象にした最新の調査では、ダニによるアレルギー性鼻炎が18.8%、スギ花粉症が16.6%と報告されており、地域や年齢によってはダニがスギよりも多い原因になることが示されています。特に注目すべきは、多くの子供が就学前、つまり6歳より前にダニアレルギー性鼻炎を発症していることです。
Imoto, Y., et al. (2024). Recent prevalence of allergic rhinitis caused by house dust mites among the pediatric population in Fukui, Japan. World Allergy Organization Journal, 17(8), 100932.
■ では、ダニとは何でしょうか。ダニは目に見えないほど小さな生き物で、人間の皮膚のかけらなどを食べて生きています。問題なのは、ダニそのものというより、ダニの死骸やフン(糞粒)です。 これらの微粒子が空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで、鼻や気管支の粘膜でアレルギー反応が起こるのです。ダニのフンには「Der p1」や「Der f1」といったアレルゲン(アレルギーを起こす物質)が高濃度で含まれており、これが主な原因物質となります。
Huang, H. J., et al. (2023). House dust mite allergy: The importance of house dust mite allergens for diagnosis and immunotherapy. Molecular Immunology, 159, 54-67.
Calderón, M. A., et al. (2015). Respiratory allergy caused by house dust mites: What do we really know? Journal of Allergy and Clinical Immunology, 136(1), 38-48.
■ ダニによるアレルギーを防ぐには、まずダニを減らすことが基本です。 そのための方法として、部屋の湿度を30〜50%に保つこと、布団や枕を専用の防ダニカバーで包むこと、シーツを60℃前後の熱いお湯で週1回洗うこと、可能ならカーペットを硬い床材に替えること、高性能フィルター(HEPAフィルター)付き掃除機をこまめにかけることなどが推奨されています。これらの対策を複数組み合わせることが、ダニとアレルゲンを減らすうえで重要だとされています。
Klain, A., et al. (2024). The Prevention of House Dust Mite Allergies in Pediatric Asthma. Children, 11(4), 469.
Wilson, J. M., & Platts-Mills, T. A. E. (2018). Home Environmental Interventions for House Dust Mite. Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice, 6(1), 1-7.
■ しかし、これまでの研究では、これらの方法が本当に効果があるかどうか、はっきりとした結論が出ていませんでした。
■ ダニは特に布団やマットレスにたくさん住んでいます。 なぜなら、そこには人の皮膚のかけらがたくさんあり、ダニにとって快適な湿度と温度が保たれているからです。子供は1日に8時間以上ベッドで過ごすので、寝具のダニを減らすことはとても重要です。
■ これまでの研究で、高性能なフィルター(HEPAフィルター)が付いた掃除機で定期的に掃除すると、ダニアレルゲンの量を大きく減らせることが示されてきました。スウェーデンでの5週間の研究では、高性能掃除機を継続使用することで、ダニアレルゲン総量が50〜85%程度減少したと報告されています。
Munir, A. K., et al. (1993). Vacuum Cleaning Decreases the Levels of Mite Allergens in House Dust. Pediatric Allergy and Immunology, 4(3), 136-143.
■ しかし、それが実際に鼻炎の症状を和らげるかどうかについては、まだ意見が分かれています。全体としては、環境整備ではなかなか難しいんじゃないかというシステマティックレビューもあります。
Leas BF, et al. Effectiveness of indoor allergen reduction in asthma management: A systematic review. J Allergy Clin Immunol 2018; 141:1854-69.
■ そこでこの研究では、ダニアレルギーを持つ子供たちのマットレスに毎日掃除機をかけることで、鼻炎の症状とダニの量がどう変わるかを調べることにしました。 研究者たちは、毎日掃除機をかければ、症状も改善し、ダニの量も減るだろうと予想しました。
■ 結果はどうだったのでしょうか?
Jeon YH, Lee YJ, Sohn MH, Lee HR. Effects of Vacuuming Mattresses on Allergic Rhinitis Symptoms in Children. Allergy Asthma Immunol Res 2019; 11:655-63.
ダニアレルギーによる軽症持続型アレルギー性鼻炎を持つ6歳から12歳の子ども40名を対象に、毎日マットレスに掃除機をかける介入を2週間実施した。
目的
■ ハウスダスト中のダニ(HDM)に対してアレルギー反応を示す子どもたちを対象に、毎日マットレスに掃除機をかけることが、ダニのアレルゲン濃度とアレルギー性鼻炎(AR)の症状にどのような影響を与えるかを評価すること。
方法
■ ダニに対してのみアレルギー反応を示す、軽症持続型アレルギー性鼻炎(AR)の子ども40名(6歳~12歳)を対象とし、ランダムに2つのグループに分けた。
■ 掃除機がけを行うグループ(介入群)の保護者は、2週間にわたり毎日、子どもの部屋を掃除し、マットレスに掃除機をかけた。
■ 掃除機がけを行わないグループ(対照群)の保護者は、マットレスへの掃除機がけはせず、通常通り部屋の掃除のみを行った。
■ AR症状を毎週確認し、研究の前後でマットレスからハウスダストサンプルを採取した。
結果
■ 研究開始時点での患者の年齢や性別などの背景情報には、両グループ間で統計的な差はなかった。
■ 介入群(掃除機がけを行ったグループ)では、2週間後にAR症状およびハウスダスト重量が有意に減少した(ARの総症状スコア P<0.001、くしゃみ P<0.001、鼻汁 P<0.001、鼻閉 P<0.001、そう痒感 P<0.001、ハウスダスト重量 P=0.006)。
■ HDMアレルゲン濃度には有意な変化は認められなかった(Der p1 P=0.333、Der f1 P=0.841)。
■ 対照群(掃除機がけを行わなかったグループ)では、AR症状、ハウスダスト重量、あるいはHDMアレルゲン濃度において有意な変化は認められなかった。
結論
■ 本研究の結果、毎日のマットレスへの掃除機がけはハウスダスト重量およびAR症状を減少させることが示された。
■ ただし、(ハウスダストそのものの量は減ったものの)その中に含まれるダニのアレルゲン濃度までは有意には減少しなかった。
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