アレルゲン舌下免疫療法は、はやめに始めたほうが、その後の利益が大きくなるかもしれない

アレルギー性鼻炎に対する免疫療法、先延ばししてもいい?という質問。

■ 舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質を含む薬を毎日舌の下に投与する治療法です。
■ 日本では、スギ花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎に保険適用となっていますが、3~5年継続して服用する必要があります。

■ アレルギー性鼻炎は、日常生活に多くの問題を及ぼします。たとえば、睡眠障害や学業・仕事の成績の低下にもつながることが知られています。

■ さらに、アレルギー性鼻炎は気管支喘息を発症するリスク要因とされており、このリスクは成人になっても続きます。

■ 外来で舌下免疫療法をおすすめすると、患者さんから『もっと年齢が高くなってからにしようと思うのですが、特に問題ないですよね?』と尋ねられることがあります。

■ たとえば、食物アレルギーに対する免疫療法はより早期にしたほうが良いのではないかという考えが提唱されるようになっています。

■ ではアレルギー性鼻炎に対する免疫療法も、より年齢が低いうちに始めたほうがいいのでしょうか?
■ 最近、このテーマにおける報告が、Allergy誌に報告されました。

Hamelmann E, Hammerby E, Scharling KS, Pedersen M, Okkels A, Schmitt J. Quantifying the benefits of early sublingual allergen immunotherapy tablet initiation in children. Allergy 2024; 79:1018-27.

5歳、7歳、12歳の時点で舌下免疫(SLIT)錠による治療を開始した小児を対象とし、マルコフモデルを用いてSLIT錠の長期的効果を評価した。

背景

■ アレルギー性鼻炎(AR)は上気道の慢性炎症性疾患であり、小児において最大45%がアレルギー性喘息(AA)に進展する。
■ 本解析は、小児期早期からARの治療として舌下アレルゲン免疫療法(SLIT錠)を開始することの臨床的および経済的利益を、新規の喘息症例が長期的に減少するかどうかを定量化することを調査する。

方法

■ 喘息発症リスクに対するSLIT錠の長期的効果を推定するために、マルコフモデルを開発した。
■ 主要パラメータは主にGRAZAX®Asthma Prevention試験のデータに基づき、年齢および治療に依存するAA発症リスク、AR重症度の進行/寛解の年間確率を含んだ。
■ 医療費はREACT試験のデータを用いて推定した。

結果

■ 中等症から重症の季節性ARの小児をモデル化したコホートでは、7歳と12歳でSLIT錠の投与を開始した場合、20年間にそれぞれ24%と29%がAAを発症した。

■ 一方、5歳で開始した場合は19%がAAを発症した。
■ さらに、5歳でのSLIT錠の投与開始は、患者1人当たり20,429ユーロの総医療費と関連しているのに対し、7歳および12歳での投与開始は、AR診断から20年後に患者1人当たりそれぞれ21,050ユーロおよび22,379ユーロと関連していた。

結論

■ 幼児期におけるSLIT錠の投与開始は、臨床的に意味のある持続的なAA新規症例が減少し、AR患児における医療費の減少と関連している。
■ この知見は、長期的な臨床的利益を得るために、ARの小児に対して早期にSLIT錠を開始することの臨床的妥当性を支持するものである。

 

 

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