子どものアトピー性皮膚炎において、タクロリムス(商品名プロトピック)外用薬は、弱いランクのステロイド外用薬よりも効果が高いかもしれない

アトピー性皮膚炎の治療薬として使われるタクロリムス軟膏。小児用のタクロリムス0.03%軟膏は、ステロイドに比較して効果や副作用に違いはあるでしょうか?

■ 現在、小児のアトピー性皮膚炎に使用できる抗炎症薬は、ステロイド外用薬以外に3種類あります。

■ この3種類の中でもっとも古い外用薬がタクロリムス軟膏になります。

古いと劣っている、というとそういうわけではありません。それぞれメカニズムが異なり、タクロリムス軟膏が有効な場面も多くあります。

■ たとえば、顔面病変や上半身などは、『刺激感が許容できれば』有効性が高いと言えるでしょう。

■ タクロリムス軟膏は、ステロイド外用薬に比較して皮膚の菲薄化(薄くなる)などの副作用がすくなく、III群クラスのステロイド外用薬が4週間連続して毎日塗ると皮膚が薄くなるのに比較して、その副作用がないことがしられています。

■ とはいえ、これまでは成人用の濃度であるタクロリムス0.1%軟膏とステロイド外用薬の比較が中心でした。小児に使用される0.0.3%の濃度における研究はすくなかったのです。

■ そして最近、小児の濃度であるタクロリムス0.03%軟膏とステロイド外用薬の比較試験がランダム化比較試験で公開されていますので共有します。

 

Mohamed AA, El Borolossy R, Salah EM, Hussein MS, Muharram NM, Elsalawy N, et al. A comparative randomized clinical trial evaluating the efficacy and safety of tacrolimus versus hydrocortisone as a topical treatment of atopic dermatitis in children. Frontiers in Pharmacology 2023; 14.

エジプト、カイロの皮膚科外来クリニックで、2〜16歳のアトピー性皮膚炎児200名を対象とし、無作為に2群に分け、タクロリムス群(タクロリムス0.03%軟膏)、ヒドロコルチゾン群(ヒドロコルチゾン1%クリーム)を1日2回、3週間使用した。

背景

■ アトピー性皮膚炎 (AD) の病因は正確には特定されていないが、そう痒を伴う皮膚反応と炎症マーカー上昇を特徴とする。
■ ステロイドはADの治療における主要な治療法であるが、多くの外用および全身的な副作用がある。

目的

■ 本研究の目的は、ADと診断された小児において、タクロリムス軟膏とヒドロコルチゾンクリームの有効性と安全性を比較評価することである。

患者と方法

■ この研究はADのある200人の小児を対象に実施された。
■ 被験者は無作為に2群に分けられ、タクロリムス群は0.03%のタクロリムス軟膏を、ヒドロコルチゾン群は1%のヒドロコルチゾンクリームを1日2回、3週間の研究期間中に使用した。

結果

■ 研究の終わりには、タクロリムスとヒドロコルチゾン群の両方で、IL-10、IL-17、IL-23の平均血清レベルが有意に低下した (p < 0.05)。

■ しかし、タクロリムス群では、これらのマーカーの平均血清レベルの低下がヒドロコルチゾン群と比較してさらに顕著だった (p < 0.05) [平均差 = 1.600, 95% CI: 0.9858–2.214; 1.300, 95% CI: 1.086–1.514; 4.200, 95% CI: 3.321–5.079]。

■ さらに、mEASIの中央値は、タクロリムス群では32から21に、ヒドロコルチゾン群では30から22に同様に減少した (p > 0.05) [中央値差 = -2.000, 95% CI: -2.651から-1.349; 中央値差 = 1.000, 95% CI: 0.3489–1.651]。

■ 軽度から中等度の一時的な灼熱感と紅斑は、タクロリムス群では、ヒドロコルチゾングループよりも高い発生率を示した (p < 0.05)。

■ 大多数では、これらの副作用は3–4日以内に解消された。
■ さらに、タクロリムス軟膏はヒドロコルチゾン群と比較して皮膚萎縮を引き起こさなかった (p < 0.05)。

結論

■ タクロリムス軟膏は、炎症マーカー値の低下においてヒドロコルチゾンクリームよりもAD治療において有益であるが、皮膚炎の重症度スケールには違いがなかった。
■ また、タクロリムスはヒドロコルチゾンに比べて安全であり、副作用のプロファイルが良好だった。

 

 

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