
卵黄で起こるアレルギー「FPIES」~診断後、いつ食べられるようになる?
■ FPIES(食物蛋白誘発性腸炎症候群)というのは、特定の食べ物を食べると数時間後に激しい嘔吐や下痢を起こす食物アレルギーの一種です。「花粉症で目がかゆくなる」「エビを食べて蕁麻疹が出る」といったよく知られるアレルギーとは仕組みが違い、IgE抗体という物質が関わらないタイプです。
■ 日本では近年、卵黄でFPIESを起こす赤ちゃんが増えています。興味深いことに、一般的な卵アレルギーでは「卵白」が主な原因とされていますが、FPIESでは「卵黄」が主役になることが多いという報告があります。この違いを知らないと、原因の特定が遅れてしまう可能性があります。
Toyama, Y., et al (2021). Multicenter retrospective study of patients with food protein-induced enterocolitis syndrome provoked by hen's egg. J Allergy Clin Immunol Pract, 9(1), 547-549.e1.
■ ところが、「いつ頃検査をすれば治ったことが分かるのか」「どのように治っていくのか」はよく分かっていませんでした。これまでの研究では、症状が出てから約7か月後に検査すると、だいたい22〜83%の子が「もう食べられる」状態になっていたと報告されています。また、2歳までに半数以上の子が卵黄を食べられるようになるという報告もあります。
■ 今回紹介する研究では、「早い時期(3〜4か月後)に検査したらどうなるか」を調べました。特に注目したのは、「完全に治る前に、中間的な段階(移行期)があるのではないか」という点です。
Kunitsu T, Hamanaka K, Tagaya M, Nonomura K. Potential for Gradual Tolerance Acquisition in Egg Yolk-Induced FPIES: A Case Series. Journal of Allergy and Clinical Immunology: Global 2025:100635.
卵黄によるFPIESと診断された乳児3名を対象に、最後に症状が出てから90〜120日後(約3〜4か月後)という比較的早い時期に食物負荷試験(OFC)を実施し、その後の経過を追跡した後方視的症例シリーズ研究。
背景
■ 卵黄による食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)は日本において認知が高まっているが、経口食物負荷試験(OFC)の最適な実施時期および耐性獲得の過程は依然として不明である。
目的
■ 本研究は、卵黄誘発性FPIESの小児において、早期OFC(最後に症状が出てから90〜120日後に実施)の結果を調べることを目的とした。
■ 特に、完全な耐性獲得に先立つ移行期(症状が完全になくなる前の中間的な段階)が存在するかどうかに注目した。
方法
■ 卵黄誘発FPIESと診断され早期OFCを受けた3名の患児を対象に、後方視的症例シリーズ研究を実施した。
■ その後の摂取状況および臨床症状を解析した。
結果
■ 3例全員でOFCの結果は陰性だった。
■ しかし、自宅で繰り返し摂取した際には、持続する下痢や嘔吐の再発といった軽い消化器症状がみられた。
■ これらの症状は、完全な耐性獲得前の移行期が存在することを示唆していた。
■ 全例で6〜7ヵ月以内に完全な耐性を獲得した。
結論
■ 早期OFCは耐性獲得を信頼性高く確認するには最適ではない時期に実施されている可能性がある。
■ OFCで症状が出なかったとしても、それが完全な耐性獲得を意味するとは限らない。
■ 臨床医は、OFCが陰性であっても、その後症状が再び現れる可能性のある移行期が存在することを認識しておく必要がある。
■ 完全な耐性獲得を確認するためには、継続的に摂取を続け、注意深く経過を観察することが欠かせない。
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