乳児期ピーナッツアレルギーの発症と寛解の実態は?

ピーナッツアレルギーは、どれくらい寛解する?他の食物とどれくらい異なる?

ピーナッツアレルギーは、欧米の子どもの2%が持っている比較的よくあるアレルギーです。日本でも少なくなく、 多くの場合、赤ちゃんの時期に体がピーナッツに対する抗体を作り始め、幼児期に実際のアレルギー症状が現れます。

■ 長い間、ピーナッツアレルギーは「一生治らない」と考えられていました。1989年の研究では、ピーナッツアレルギーの子どもはほとんど治らないと報告されていました。しかし、その後の研究で、実は一部の子どもが幼児期のうちに治ることも分かってきました。

■ すなわち、ピーナッツの自然寛解の理解が大きく変化してきた歴史があります。オーストラリアのHealthNutsコホート研究では、1歳で確定診断されたピーナッツアレルギーの子どもの約22%が4歳までに治ることが報告されました。

Peters, R. L., et al (2015). Natural history of peanut allergy and predictors of resolution in the first 4 years of life. J Allergy Clin Immunol, 135(5), 1257-1266.

■ さらに同じ研究グループの6歳までの追跡では、寛解率は約29%に上昇し、

Peters, R. L., et al (2022). The natural history of peanut and egg allergy in children up to age 6 years in the HealthNuts study. J Allergy Clin Immunol, 150(3), 657-665.

■ 10年間の長期追跡では約34%の子どもが自然に寛解することが明らかになっています。

Parker, K. M., et al (2024). Longitudinal peanut and Ara h2 sIgE/IgG4 and ratios are associated with natural resolution of peanut allergy in childhood. Allergy, 79(7), 1868-1880.

■ 予測因子の理解も進歩しています。従来は診断時の検査値の高さに注目していましたが、近年の研究では「検査値の変化の方向性」がより重要であることが分かってきました。特に、Ara h2特異的IgEが下がり、IgG4が上がる軌跡が寛解と強く関連することが示されています。

■ 最近では、ピーナッツアレルギーを予防する方法が注目されています。LEAPという研究では、赤ちゃんの時期からピーナッツを食べさせることで、アレルギーになるリスクを81%も減らせることが分かりました。これは「アレルギーになりそうな食べ物は避ける」という従来の考え方を大きく変える発見でした。

■ さらに、治療による寛解の可能性も広がっています。舌下免疫療法(SLIT)や経口免疫療法(OIT)により、自然経過を上回る寛解率を達成できることが示されており、

Kim, E. H., et al (2024). Desensitization and remission after peanut sublingual immunotherapy in 1–4-year-olds. J Allergy Clin Immunol, 153(1), 173-181.

■ 「何もせず待つ」だけでなく、能動的に予後を変える選択肢も登場しています(リスクもあるので、自己判断はすすめられませんが)。

■ この論文の研究者たちは、3つの大きな研究グループ(LEAP、EAT、PAS)のデータを使って、ピーナッツアレルギーがいつ始まって、いつ治るのかを詳しく調べました。血液検査や皮膚テストの結果を長期間追跡することで、アレルギーの経過を予測できるパターンを見つけようとしたのです。

簡単な解説を、音声ラジオVoicyで放送いたしました。

Foong R-X, Bahnson HT, Du Toit G, Huffaker M, Sampson HA, Suárez-Fariñas M, et al. Kinetics of early peanut allergy development and resolution in the EAT, LEAP, and PAS cohorts. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2025.

3つのコホート研究(EAT、LEAP、PAS)に参加した2137人の子どもを対象に、生後12か月までのピーナッツアレルギー発症とその後3~5年間の経過を追跡調査した。

背景

■ 乳児期早期のピーナッツアレルギー(PA)の発症および寛解の実態は十分に解明されていない。
■ 本研究では、3つのコホートにおいてPAの自然史とバイオマーカーを縦断的に検討した。

方法

■ Enquiring About Tolerance(EAT)、Learning Early About Peanut(LEAP)、およびPeanut Allergy Sensitization(PAS)の各コホートでPAの発症を検討した。
■ 早期PAは、生後12か月までのSPT>4 mmまたは登録時の経口食物負荷試験(OFC)で定義し、研究終点(EATは36か月、LEAP/PASは60か月)でOFCによりPAを確認した。

■ 表現型として、早期発症・持続(EP)、早期発症・寛解(ER)、後期発症(LA)、および非アレルギー(NA)の4群を設定した。

■ 各群間で臨床的特徴とバイオマーカーを比較した。

結果

■ PA児の56.3%が12か月までに発症し、早期PAと判定された児の32.1%が研究終点までに寛解した。

■ 早期PAの寛解率はEATで54.2%、LEAPで41.4%、PASで18.6%であった。
■ SPT膨疹中央値は、ベースラインでEP/ER/LAがそれぞれ6/2/0 mm、研究終点では10/0/9 mmであった。
■ ピーナッツ特異的IgE(sIgE)中央値は、ベースラインでEP/ER/LAが5.9/0.4/0.3 kUA/L、生後12か月で4.7/1.3/0.9 kUA/L、研究終点で20.1/0.2/5.1 kUA/Lであり、いずれも群間差はP<.001
であった。

■ LAは、Ara h 1–sIgE、Ara h 2–sIgE、Ara h 3–sIgEの>0.1 kUA/L陽性コンポーネント数のコンポーネント拡大がEPに比して遅かった。

■ ERではベースラインから12か月にかけてコンポーネントが拡大し、その後研究終点までにコンポーネントの後退を示した。
湿疹なしおよび卵アレルギーなし、ならびに低いピーナッツsIgE/SPTはPA寛解の予測因子であった。

結論

■ 乳幼児期に相当数のPAが早期に寛解する
■ PAの異なる表現型は、異なるバイオマーカーの経過を示す。

 

 

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