生後6ヶ月より前からの早期離乳食開始は食物アレルギー予防となるかもしれない(EATスタディ)

Perkin MR, et al. Randomized Trial of Introduction of Allergenic Foods in Breast-Fed Infants. N Engl J Med 2016 (in press).

最初の記事。食物アレルギー予防研究の金字塔であるEATスタディ。

■ EATスタディは、離乳食早期開始による食物アレルギー予防研究の金字塔です。

 

PECO
P: 2012年7月から2009年11月までに英国・ウェールズでリクルートされた母乳栄養の生後3か月児1303名
E: ピーナッツ、鶏卵、牛乳、ゴマ、白身魚、小麦 生後3-6ヶ月からの早期導入群
C: 上記の食物を生後6か月以降開始する標準導入群(生後6か月までは完全母乳でその後は各自の自由)
O: 1歳、3歳でのそれぞれの食物アレルギー発症率

 

結果

■ 早期導入群において皮膚プリック検査(SPT)陽性者は開始時に食物負荷試験を行い、週あたり推奨用量75%(蛋白質3g/週)の摂取を行った。早期導入群でのプロトコル順守率は31.9%だった。

■  ITT解析において、標準導入群では42/595名(7.1%)、早期導入群32/567名(5.6%)で食物アレルギー(FA)を発症し有意差はなかった(P=0.32)。

■ しかし、per-protocol解析(生後3-6か月に少なくとも5週間、対象食物を週3g以上摂取した群)において、早期導入群は標準導入群より食物アレルギー発症率が有意に低かった(2.4%対7.3%、P=0.01)。

論文から引用。全体では有意差なし。実行できた群のみでは有意差あり。

■ 特に、ピーナッツ(0%対2.5%、P=0.003)と鶏卵(1.4%対5.5%、P=0.009)で有意であり、乳、ゴマ、魚、小麦ではその効果が認められなかった。

■ ITT解析において、SPT陽性率は早期導入群において、生後12か月で低い傾向(p=0.07)だったが、有意ではなかった。

■ per-protocol解析では、SPT陽性率は早期導入群で生後12か月で42%(P=0.01)、生後36か月で67%(P=0.002)低下した。

 

 

コメント

■ 先行したLEAP study (NEJM2015)は、生後5-10か月からピーナッツを定期的に摂取する群と完全除去群でのランダム化試験であった。

■ このEAT studyは生後3か月と6か月から離乳食を開始する群でのランダム化試験でありdesignはかなり異なる。つまり、「早期導入」とはいえ開始時期が異なることに注意が必要である。

■ そして、早期導入の3割程度しかプロトコルが順守できておらず、本文中でも「容易には成し遂げられなかった」と述べられている。プロトコール順守のできたPer-Protcol解析群で効果が認められた(ピーナッツ・卵のみ)ことから、早期開始は効果があることがわかる。

■ 本邦では5か月前後から離乳食を始め、本格的に摂取するのは6か月以降ではないだろうか。6か月以降で開始した群を早期開始と言えるかどうかはわからないが、実臨床への応用するには、この時期に積極的に開始することと,1歳まで除去食をするリスクを比較する必要があるかもしれない(倫理的に許される研究デザインかどうかは別)。

■ ただし、生後6か月以降に始めるのは、さらにすでにFAを発症しているリスクに配慮しなければならないともいえる。

■ また、その実施が可能なプロトコールであるのか、また、食物の種類によって効果が異なる可能性があることにも配慮しなくてはならない。

■ このスタディは今後長く使われることになるであろう結果であるが、まだまだFA予防への地平線は遠いようだ。

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