新規アトピー性皮膚炎外用薬タピナロフ1%クリームの有効性と安全性は?

AhRは炎症を調整するタンパク質で、タピナロフはこれを活性化しアトピー皮膚炎に効果がある。

■ アリール炭化水素受容体(AhR)は、炎症や体内のバランスを調整する役割を持つたんぱく質です。

■ ちょっと深堀りすると、アリール炭化水素受容体(AhR)とは、リガンド依存の転写因子です。
■ 難しい言葉なので噛み砕くと、リガンドとは、特定のたんぱく質や受容体に結びつく小さな分子のことです。つまりリガンドは鍵、受容体は鍵穴のような関係にあります。
■ そして転写因子とは、細胞の中で遺伝子のスイッチをオンやオフにするたんぱく質のことです。

■ まとめると、アリール炭化水素受容体が鍵(リガンド)となり鍵穴(受容体)に結合すると、細胞における遺伝子のスイッチが押されるわけです。

■ 『タピナロフ』は、このAhRを活性化し、乾癬やアトピー性皮膚炎に有効性があるとされています。
■ しかし、タピナロフを長期間使用した場合の効果と安全性についても、データが不足していました。

■ そのようななかで最近、2歳以上の小児も含んだフェーズ3試験であるADORING試験がJAADに報告されました。

Silverberg JI, Eichenfield LF, Hebert AA, Simpson EL, Stein Gold L, Bissonnette R, et al. Tapinarof Cream 1% Once Daily: Significant Efficacy in the Treatment of Moderate to Severe Atopic Dermatitis in Adults and Children Down to 2 Years of Age in the Pivotal Phase 3 ADORING Trials. Journal of the American Academy of Dermatology 2024.

中等症・重症アトピー性皮膚炎のある2歳以上の小児と成人813人をタピナロフ1%クリームまたは基剤を1日1回投与する群に無作為に割り付けられ、8週間観察された。

背景

■ アリール炭化水素受容体作動薬であるタピナロフクリーム1%を1日1回塗布すると、炎症性Th2サイトカインの発現が低下し、皮膚バリア関連成分の発現が増加し、酸化ストレスが軽減される。

目的

■ アトピー性皮膚炎(AD)の成人および2歳以上の小児におけるタピナロフの有効性と安全性を評価する。

方法

■ 813人の患者が、2つの8週間の第3相試験で、タピナロフまたはビヒクルを1日1回投与する群に無作為に割り付けられた。。

結果

■ 主要評価項目である、8週目にvIGA-ADTMスコアが0または1となり、ベースラインから2段階以上改善した患者の割合は、2つの試験で統計的に有意な差が見られた。

■ すなわち、vIGA-ADTM(スコア0または1で、ベースラインから2段階以上改善)を達成した割合が45.4% 対 13.9%、46.4% 対 18.0%(タピナロフ対プラセボ、いずれもP<0.0001)だった。

■ また、8週目におけるEASI75反応率も、タピナロフとプラセボで有意差が認められた。
■ タピナロフ群は55.8%に対し、プラセボ群は22.9%、タピナロフ群は59.1%に対し、プラセボ群は21.2%だった(いずれもP<0.0001)。
■ 患者が報告したそう痒症についても、タピナロフ群とプラセボ群で有意な改善が見られた。
■ 毛包炎、頭痛、鼻咽頭炎などの一般的な有害事象(5%以上)は、ほとんどが軽度または中等度であり、タピナロフ投与群では有害事象による投与中止率がプラセボ投与群よりも低かった。

限界

■ 長期的な有効性は評価されていない。

結論

■ Tapinarofは、2歳までの多様なAD患者において、非常に有意な有効性と良好な安全性および忍容性を示した。

 

 

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