多くの子どもが発症するアトピー性皮膚炎では、皮膚バリア機能低下と経皮水分蒸散量増加が関係します。
■ アトピー性皮膚炎は、日本でも10%前後の子どもが発症し、さまざまなアレルギー疾患のリスクをあげることが知られています。
■ アトピー性皮膚炎がある、すなわち炎症があると皮膚のバリア機能がさがり、皮膚から逃げていく水分量が増えます。
■ その皮膚から逃げていく水分量のことを経皮水分蒸散量(TEWL)といいます。
■ 生まれたときのTEWLが高い子どもは、その後にアトピー性皮膚炎を発症しやすくなることもわかっています。
■ そこで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げるために皮膚に保湿剤を塗布するという方法が提案されるようになりました。
■ 2014年に我々の研究グループは、保湿剤によりアトピー性皮膚炎の発症リスクを下げることを報告しました。
■ しかし、2020年以降、大規模研究で『保湿剤』を塗布すると、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げないことが示されました。
■ そのうちのひとつが、スウェーデンで実施されたPreventADALLスタディです。
■ Prevent(予防する)、AD(Atopic dermatitis;アトピー性皮膚炎の略)、ALL(全て)という、めちゃくちゃアトピー性皮膚炎を予防することを目標にした略語ですよね。
■ しかし、予防はできなかったのです。
■ では、その『保湿剤』の使い方はどのような方法だったのでしょうか。
■ ミネラルオイルをバスタブに入れて入浴し、顔のみ保湿剤を塗る…という方法でした。さて、そのような方法が保湿剤を塗布するという方法に代用できると思うでしょうか。
■ しかも、バスオイルが頻回であるほど、皮膚バリア機能が下がるかもしれないという報告が追加されました。
Rehbinder EM, Hoyer A, Bradley M, KC LC, Granum B, Hedlin G, et al. Frequent oil-baths and skin barrier during infancy in the PreventADALL study. The British Journal of Dermatology 2024:ljae091-ljae.
PreventADALL試験に参加した乳児のうち、2153人の乳児が皮膚介入(SI)群(995人)と非皮膚介入(NSI)群(1158人)を検討した(SI群は生後2週から8か月まで週4回のオイルバスを実施)。
背景
■ 一般集団を対象としたランダム化比較試験PreventADALL試験では、生後2週からの頻繁なエモリエントバス添加剤の使用はアトピー性皮膚炎の予防に効果がないことが示されたが、乳児期を通じての皮膚バリア機能への影響は確立されていない。
目的
■ この探索的予備スタディの主目的は、ミネラルオイルを使用したバスが経皮水分蒸散量(TEWL)や乾燥肌に及ぼす影響を評価することであり、第2の副目的としてフィラグリン(FLG)遺伝子変異がその効果を修飾するかどうかを調査することである。
方法
■ 計2153人の乳児が「Skin intervention」(SI) グループ(生後2週から8か月まで週4回のオイルバス)または「No skin intervention」(NSI) グループにランダムに割り付けられた。
■ TEWLの測定は生後3、6、12か月で行われ、FLG遺伝子変異の情報は1683人の乳児で利用可能だった。
■ TEWLや乾燥肌に対する皮膚介入の効果は混合効果回帰モデルにより評価された。
結果
■ SIグループのTEWLはNSIグループに比べて平均0.42 g/m²/h(95%信頼区間: 0.13–0.70, P = 0.004)高かったが、特に生後3か月で顕著だった。
■ 生後6か月・生後12か月ではTEWLに差は見られなかった。
■ 乾燥肌は生後3か月および6か月でNSIグループよりもSIグループで有意に少なかったが、生後12か月では差がなくなった。
■ FLG変異保有者では、SIグループのTEWLはNSIグループと同様であり、SIとFLG変異の間に相互作用は見られなかった。
結論
■ 生後2週から頻繁にオイルバスを受けた乳児は、対照群と比較して乳児期を通じて皮膚バリア機能が低下し、生後3か月でのTEWLが高くなることが主な要因だった。
■ しかし、生後3か月および6か月では、皮膚介入を受けた乳児の方が乾燥肌の割合が低かった。
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