内服JAK阻害薬は、アレルギー反応や皮膚バリア機能を示すTh2・Th22細胞の反応性を低下させる

アトピー性皮膚炎の治療薬、内服JAK阻害薬の効果。

■ アトピー性皮膚炎は、慢性的な炎症を起こす皮膚の病気で、皮膚バリア機能障害やヘルパーT2(Th2)・Th22による炎症が特徴となります。

■ 経口JAK阻害薬アブロシチニブ(商品名サイバインコ)は、中等症以上のアトピー性皮膚炎の治療薬として、日本でも12歳以上で承認されています。

■ 最近我々は、ウパダシチニブ(商品名リンヴォック)に関して、4週間の皮膚バリア機能やTh2サイトカインの動きを報告しました。

■ しかし、内服JAK阻害薬のバイオマーカーの動きに関しては、まだまだ研究結果が不足しています。
■ そのようななか、JADE MOA試験(中等症以上のアトピー性皮膚炎に対するアブロシチニブの作用機序を確認するための試験)が報告されていました。

Guttman-Yassky E, Facheris P, Gomez-Arias PJ, Del Duca E, Da Rosa JC, Weidinger S, et al. Effect of abrocitinib on skin biomarkers in patients with moderate-to-severe atopic dermatitis. Allergy 2024; 79:1258-70.

46人の中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者に対し、アブロシチニブ200 mg(14人)、アブロシチニブ100 mg(16人)、プラセボ(16人)を1日1回12週間投与した。

背景

■ これは、中等症から重症のアトピー性皮膚炎(AD)患者における皮膚バイオマーカーの発現に対する、ヤヌスキナーゼ1選択的阻害剤であるアブロシチニブの効果に関する最初の報告である。

方法

■ JADE MOA(NCT03915496)は二重盲検第2a相試験である。

■ 成人を1:1:1の割合で、1日1回のアブロシチニブ200 mg、アブロシチニブ100 mg、プラセボの単剤療法を12週間受けるように無作為に割り付けた。
■ 主要評価項目は、12週間を通じて、皮膚における炎症マーカー(matrix metalloproteinase [MMP]-12)、表皮過形成(ケラチン-16[KRT16])、T-ヘルパー2(Th2)免疫応答(C-C motif chemokine ligand [CCL]17、CCL18、CCL26)、Th22免疫応答(S100カルシウム結合タンパク質A8、A9、A12[S100A8、S100A9、S100A12])のベースラインからの変化であった。

結果

■ 計46人がアブロシチニブ200 mg(n=14)、アブロシチニブ100 mg(n=16)、プラセボ(n=16)を受けた。

■ アブロシチニブはADの臨床症状を改善し、そう痒を減少させた。

■ MMP-12、KRT16、S100A8、S100A9、S100A12の遺伝子発現は、アブロシチニブ200 mg(2、4、12週目)とアブロシチニブ100 mg(4、12週目)で用量依存的に有意に減少した。
■ アブロシチニブ200 mgは、12週目のCCL17発現、2、4、12週目のCCL18発現のベースラインからの有意な減少をもたらした。
■ CCL26については有意な減少は認められなかった。

結論

■ ADの臨床症状の改善とともに、12週間のアブロシチニブ治療により、中等症から重症のAD患者の皮膚において、炎症、表皮過形成、Th2およびTh22免疫応答に関連する遺伝子の発現が抑制された。

 

 

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