保湿剤塗布前後でのバイオマーカーの変化
Hoppe T, et al. Moisturizing treatment of patients with atopic dermatitis and ichthyosis vulgaris improves dry skin, but has a modest effect on gene expression regardless of FLG genotype. J Eur Acad Dermatol Venereol 2015; 29:174-7.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24330146


あんまり色々検査しすぎると、統計も無意味になってしまうかもという研究結果。
惜しい、、


P: アトピー性皮膚炎(AD)もしくは尋常性魚鱗癬(IV)患者43名 (フィラグリン遺伝子変異+/+14例、+/-14例、-/-15例)
E: 3種類の保湿剤を4週間塗布 A; Miniderm(グリセロール含有) B; Propyless(プロピレングリコール含有) C; Canoderm(尿素含有)
C: -
O: 前腕内側TEWL、乾燥評価に基づく4段階乾燥評価(SCORADで使用されるものと同等)、 定量的PCRにより、以下のバリア機能修復バイオマーカーが調べられた。
FLG、 CCL18、IL-1α、TLR4、CD68、脂肪酸合成酵素(FASN)、アセチル‐CoAカルボキシラーゼβ(ACACB)、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、セリン-パルミトイル-CoAトランスフェラーゼ2(SPTLC2)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA還元酵素(HMGCR)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGCS1)、ホスホリパーゼA2G2A(PLA2G2A)、PPARG、PPARΒ、LXRB/NR1H2、ALOXE 3、IVL。
【結果】
試験開始時に、乾燥スコア2or3(max4)は、FLG+/+群(53.3%)、FLG-/-群で(7.1%)であり、FLG突然変異をもつ患者は、有意にTEWLが高かった(p = 0.006)。
保湿剤塗布前後で、保湿剤の効果は、FLG-/-群で最も高かった。
いくつかの遺伝子発現に有意な変化が認められたが、統計学的な統計を繰り返すことによる疑陽性結果である可能性があったため、事実上有意な変化とは言えなかった。
【コメント】
先行研究で、保湿剤塗布によりある程度FLG遺伝子変異が正常化する可能性が示唆されているようである。
しかし、この研究ではその効果は認められなかった。おそらく、すさまじく多い数の遺伝子プロフィールを調べてしまったために、統計学的に疑陽性なのではないかとeditorに指摘された可能性がある。
この研究ではグリセロール含有保湿剤が最も改善傾向があったようであるが、別の論文では尿素製剤と参照薬で尿素製剤が有意にAD再燃を防いだという報告がある(当ブログで既報)。保湿剤に何を選択するかはまだまだこれからの研究が必要と思われる。

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