栄養的なアプローチによるアレルギー疾患の一次予防: レビュー

Rueter K, Prescott SL, Palmer DJ. Nutritional approaches for the primary prevention of allergic disease: An update. J Paediatr Child Health 2015; 51:962-9; quiz 8-9. 

 

■ インパクトファクターは低いJournalですが、アレルギー界の重鎮であるPrescott先生やPalmer先生が名を連ねておられたので読んでみました。

■ このレビューはEATスタディやLEAPスタディ(それぞれブログでUP済)がまだpublishされていない時期のレビュー。

■ 去年のレビューなのに、すでに少々古さを感じ、ここ1年だけでも凄まじく食物アレルギーの知見が進んできていることは空恐ろしくも感じます。

 

まとめ

■ ω-3多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)は、抗炎症作用を持つ。

■ n-3PUFAの摂取量減少とn-6PUFA(特にマーガリン)の摂取量の増加は、アレルギー疾患の増加と対応した。そこでランダム化比較試験(RCT)が行なわれ、結果として、第2、第3半期のn-3PUFA摂取が湿疹・食物感作と喘息のリスクを低下させる可能性があることが示唆された。そこで、オーストラリアの栄養ガイドラインでは、2-3回/週の魚油の多い魚(例えばサーモンやマグロ)摂取を推奨している。

■ 食物繊維食の減少は、炎症性疾患の増加に関係する。

■ 食事繊維増加は、SCFA発酵製品を含む微生物代謝産物産生を変化させる。

■ そして、プレバイオティクスは乳児に対し、Eczema(=湿疹≒アトピー性皮膚炎)のリスクを減少させることを示唆した。エビデンスは不足しているが、食事繊維(全粒粉のパンと穀類、マメ科植物、果物と野菜)の摂取は標準保健食として推奨されなければならない。

■ プロバイオティクスに関し、妊娠中・出産後の妊婦もしくは授乳婦、または乳児に投与したRCTがすくなくとも15件ある。

■総じてこれらの研究はEczemaをおよそ半分に減少(25-50%)させたが、同じ菌株と類似のプロトコルが使われた研究では効果が再現できなかった。それらの矛盾は、遺伝子、環境要因(異なる生菌株または組合せを含む不均一性、分娩方法、使われる食物マトリックス、用量、包含基準、介入のタイミングと継続と臨床転帰測定)の違いに起因する可能性がある。

■ 抗酸化剤、ビタミンE、ビタミンC、銅を多く摂取することでアレルギー予防を試みた報告は、RCTが不足している。

■ 出生前・後のビタミンDとアレルギー発症に関する観察試験は、矛盾する結果だった。

■ 妊娠中の食物除去は、児に対するアレルギー疾患発症に影響を及ぼさないどころか、これらの摂取がアレルギー疾患のリスクを低下させさえするかもしれないことを示唆した。

 

コメント

■ 食事からアレルギーが予防できるかどうかを概観した総論。

■ このレビューの後、EAT研究、LEAP研究、LEAP-on研究など大規模なランダム化比較試験やその後のデータが続けざまに発表され、急速に発展してきている。

まとめると、

■  妊娠または授乳期の母の除去食は、アレルギー疾患予防に効果的ではない。

■  生後4ヵ月以降に離乳食を遅らせることは、アレルギーに予防的効果はない。

■  母乳栄養は、少なくとも6ヵ月間推奨される。

■  完全母乳栄養が不可能な場合、加水分解乳は、アレルギー疾患のハイリスク児で考慮されるのみである。十分なエビデンスが利用できるようになるまでは、加水分解乳がアレルギー疾患のリスクを低下させる可能性を誇張してはいけない。 (最近、加水分解乳に関しては、RCTの15年後の結果がAllergyに発表されている。)

■  プロバイオティクスは湿疹予防に関して示唆されている、しかし、他のアレルギー疾患に対しては効果が不十分である。
と、なる。

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