インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの原因とは?

インフルエンザワクチンによるアナフィラキシー。原因はなにかを検討した日本からの報告。

 季節でもありますので、今日と明日はインフルエンザワクチンの研究結果をUPしようと思います。

 二本とも本邦の報告です。

 2011-2012年度のシーズンに、インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの頻度が増加し、その原因に関する検討結果が国立病院機構三重病院の長尾先生らのグループから報告されました。

 その原因は、もちろん卵ではありませんでした。

 

P: 2011~2012年度に本邦でインフレンザワクチン関連アナフィラキシー(influenza vaccine-associated anaphylaxis ;IVA)を報告された児
E: IVAの確定された25人
C: 年齢マッチされた対照19人(予防接種後に副作用の認められなかった卵アレルギー児10名を含む)
O: アナフィラキシーを惹起した因子

 

 

Nagao M, et al., Highly increased levels of IgE antibodies to vaccine components in children with influenza vaccine-associated anaphylaxis. J Allergy Clin Immunol 2016; 137:861-7.

結果

 いくつかの製造業者で作成されたインフルエンザ3価ワクチンの特異的IgE抗体価と血球凝集素蛋白質を卵と細胞培養から得た。

 そして、フローサイトメトリーによりCD203c発現を測定し、抗原誘発好塩基性活性化が確認された。

 さらにワクチンの賦形剤に対しても、CD203c発現を確かめられた。 IVAを有する患者の誰も、重篤な卵アレルギーを認めなかった。

 結果として、インフルエンザワクチン抗原に対する特異的IgE抗体価は、すべての製造業者からの全ワクチン、卵と細胞培養由来の血球凝集素タンパク質(H1、H3とB)は、対照と比較してIVA患者で、有意に増加した。

 インフルエンザワクチンによって誘発された塩基好性CD203c発現も、対照ではなくIVA患者で強く発現した。

 IVAが2‐フェノキシエタノール(2-PE)が含有されるワクチンで最も頻度が高かったため、2-PE(防腐剤)に対する好塩基性活性化も確認され、その活性化はチメロサールではなく2-PEでわずかに強く発現した。

 

2011~2012年度のインフルエンザワクチン関連アナフィラキシー(IVA)の増加の原因は、卵ではなくインフルエンザワクチンの構成成分に対する反応だったとまとめられます。

 本邦における2011~2012年度のインフルエンザワクチン関連アナフィラキシー(IVA)の増加の原因は、卵ではなくインフルエンザワクチンの構成要素に対する特異的IgE抗体に起因したとまとめられます。

 以下は本文中に述べられていることですが、2011~2012年度のインフルエンザ・シーズン本邦で報告されたある製造業者(製造業者A)がIVAの有意な増加を報告(平年1例/140万dose、2011年1例/40万dose)しました。製造業者Aは、防腐剤として、2‐フェノキシエタノール(2-PE)を使用し、他の業者はチメロサールを使用していました。防腐剤のせいだけではないことはこの研究結果で明らかではありますが、IVAの原因として、一部は2-PEが関与した可能性があるとされていました。

 さらにこれも本論文にも述べられていますが、鶏卵から製造されるインフルエンザワクチンは、卵アレルギー患者に対し、潜在的なリスクがあると考えられます。しかし、実際はインフルエンザワクチン関連のアナフィラキシー(IVA)患者は、必ずしも卵アレルギーを持っていません。また、アナフィラキシーと他の薬害反応(例えば迷走神経反射)を区別することは、困難な場合があり、アレルギーですらない場合もあります。

 インフルエンザワクチンに含有される卵アルブミン量は、WHOによって10μg/mL未満と定められていますが、本邦で製造されるワクチンに含有された卵アルブミン量ははるかに少ないです(0.8ng/ml=0.0008μg=0.0000008mg未満)。

 つまり、ごくわずかでも卵を摂取している児に対し、インフルエンザワクチンを避けることが不合理としか言えないくらいの量しかワクチンには卵は含まれていません。卵白を微量摂取できている場合は言わずもがなで、例えば、固ゆで卵黄(卵白ではない)が摂取できればすでにワクチンに含まれた卵の量を超えた卵アルブミンを摂取していることになります。

 卵アレルギーを完全に無視するわけにはいかないでしょうが、卵アレルギーよりも、万が一の対応ができるような対策を進めることが重要ではないでしょうか。

 

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