Moncrieff G, et al., Use of emollients in dry-skin conditions: consensus statement. Clin Exp Dermatol 2013; 38:231-8; quiz 8.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23517354

 


今週は、保湿剤の論文がメインになります。

まず、今回は論文ではなく、保湿剤に対する英国のコンセンサス声明です。エビデンスに基づくというより多分に経験に基づく部分があり、”みんなこんな風に考えていますよね”といったコンセンサスを文書化したといえます。

なお、このステートメントは、ネットで全文を確認可能です。こういった声明は広く周知する必要がありますから、フリーで読めるようにしていただけると助かりますね。

全文を読んだのですが、冒頭部分と結果と推奨(Conclusions and recommendations)をメインにして、本文の重要そうな記載をカッコで追加し、最後にサマリー(要約)を書くことにします。もちろん、このまま使うわけにはいかない部分もあり、コメントもつけてみます。


 

ドライスキンの病態生理学の理解が進み、個々の患者のための最適な製品選択はますます重要となっている。

ドライスキンは、アトピー性皮膚炎/湿疹(AD/AE)、魚鱗癬、刺激性接触性皮膚炎、乾癬、皮脂欠乏性湿疹といった、皮膚における一般的な症状であり、未治療のままの場合、アトピー性皮膚炎のような紅斑になるかもしれない。
角質細胞は天然保湿因子(NMF)を含み、水分を保持し、角質層(SC)の脂質はセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸から成り、ラメラ構造を形成している。SCに含有されるNMFや遊離脂肪酸は、低pHを維持しすることを補佐している。pHレベルは表皮バリアの形成と落屑のバランスを持続するための中心的な調節因子であるため、このシステムを混乱させる因子は、ドライスキンを増悪させる。

 

 

結果と推奨

・適切な時に、充分な量で処方される保湿剤の適切な使用は、患者の生活の質を改善し、コストを低下させる可能性がある。

・それらに関して患者を教育し、保湿剤の情報に基づいた選択をするのを助けることに時間を費やすことが重要である。

・そして、それは治療に有効なアドヒアランスを改善させ、生活の質に大きく影響する可能性がある。

・選択プロセスに役立つ、異なるタイプの保湿製品のガイドを作成した。表は、乾燥皮膚を特徴とする疾患治療に適切な治療的なアプローチの適応を明確にすることを目的とする。

 (塗布しつづける保湿剤として、親水軟膏BPが回避されなければならないというエビデンスは増えている。親水軟膏BPは約1%の硫酸ラウリルナトリウム[SLS]を含み、陰イオン性界面活性剤が強い刺激物になることが知られている。最近の研究は、親水軟膏BPの使用が表皮性バリアを弱め、TEWLを増加させることを示している。)

(保湿剤が一般医療で広く処方されるにもかかわらず、しばしば十分量が処方されていない。 どの保湿剤を使用するべきかについて、保湿剤がすべて同じではない点に注意する必要がある。セラミド、脂肪酸、尿素、グリセロールといった補助製剤に理論的な正当性はあるが、実際に有効性を保障するという強いエビデンスは十分でなく、緊急に得る必要性がある。尿素を含有している保湿剤が有効性を強化し、無治療群に比較して、ステロイドの使用を減らしたり、AEの再燃を遅らせるといういくらかのエビデンスはある。皮膚が成熟するにつれてNMFは減少し、水を保持する能力は減少する。減少を補填するためにNMF成分(例えば尿素)を含有する保湿剤の使用は正当性がある。)

(保湿剤は、美容的な忍容性、クリーム、軟膏製剤、油含有量、添加物の特性(例えば保湿成分および/またはかゆみを抑える)によって選択される。保湿剤は最適な効果が得られる十分量(250-500g/週)を処方しなければならない。また、主な処方に加え、仕事場や学校での使用のために少量パックも提供されなければならない。)

 

・アドヒアランスを確実にするために、保湿剤の選択は患者とも相談する。保湿剤の整合性、美容的な忍容性、パッケージ、生活様式におけるニーズ、塗布方法を考慮する。

・理想的には、皮膚に用いられるすべての製品は保湿剤ベースでなければならず、保湿成分を含む洗浄剤が石鹸を置き換えるべきである。

・従って、複数の製品の処方を必要とすることもしばしばである。

・従来の石鹸と洗剤(シャワーゲルとバブルバスを含む)は、回避されなければならない。

(石鹸や強い合成洗剤(例えば硫酸ラウリルナトリウム[SLS])の使用は、皮膚脂質とNMFを除去しSCのpHを上昇させることが示唆されている。pH高値は、皮膚のバリア・ホメオスターシスを阻害し、落屑を増加させ皮膚形成を阻害する。それらの効果は若年成人より乳児と高齢者のほうがよりリスクがある。)

( 乾燥皮膚と保湿剤使用に関する教育 AE治療における最初のステップは、合成洗剤を含む刺激物の回避である。洗剤使用(石鹸、シャンプー、シャワーゲル、バブルバス、手洗浄)の回避は、保湿剤による治療法と協調する必要がある)

 

【サマリー】

・アトピー性皮膚炎 保湿剤とステロイドの使用は、30分間あけなければならない(塗布順序は、重要でない)。

・タクロリムス軟膏の使用は、保湿剤の使用と1時間あけなければならない。

・保湿剤とステロイド外用薬の処方量は、10:1の比率で適用されなければならない 。

・微生物による汚染を回避するために、患者は手または指を保湿剤のポットにいれてはならない。

・きれいなスプーンできれいな容器にクリームを移さなければならない。

・消毒浴用オイルの間欠的な使用は、紅斑を低下させうる。

 

 

コメント

私は、石鹸洗浄に関しては、本邦のように高温多湿の環境では回避したほうが改善する場合と悪化する場合とあると考えています。また、英国のように、バブルバスで入浴してふき取るという入浴方法をとる場合と、本邦のようにたっぷりのお湯で流す場合でも結果は異なるでしょう。本邦の夏場でこのような指導をすると悪化する人のほうが多いという印象を受けます。

また、タクロリムスやステロイド外用薬を使用する場合に、30-60分あけて塗布するのは実施困難で治療継続することが難しくなるように思います(ここに関しては、NICEというガイドラインを参考に記載されており、エビデンスは不十分なようです)。

また、「保湿剤とステロイド外用薬の処方量は、10:1の比率で適用されなければならない 」に関しては、「希釈する」という意味ではなく、処方量をこの割合にすることを推奨しているといえます。「ステロイド外用をメインに処方するのではなく、保湿剤メインにしていきましょう」ということですね。

このように、海外の推奨をそのまま本邦で使用するのは、国ごとの気候や風土を考慮する必要性があります。

もちろん、参考になる点もたくさんありますけど、この論文で言及されているように、患者さんの治療背景や治療ステージがあり、処方内容・治療も変化するということだと思います。

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