ビブラマイシンによるマイコプラズマの治療: 後ろ向き症例対照研究

ビブラマイシンは、マイコプラズマの加療に使われ、ミノマイシンより小児・妊婦への安全性が高い可能性があります。

■ 昨日、小児マイコプラズマ感染に対するビブラマイシン投与の安全性を検討したシステマティックレビューをUPしました。

■ 調べているうちに、マイコプラズマに対するビブラマイシンの効果を検討した報告を見つけました。

 

2018/9/4追加。

■ 最近、NS先生のツイートで、米国小児科学会がテトラサイクリン系抗菌薬であるドキシサイクリンの使用を許可するようになったということを知りました。

 

PECO
P: 2010年3月から2013年3月までに香港のTuen Mun病院にcommunityacquired pneumonia (CAP;市中肺炎)のために入院加療を行った児257人中、喀痰からマイコプラズマが検出された18歳以下の児
E: -
C: -
O: 抗生物質開始後、入院と解熱までの期間(time-to-defervescence;TTD)に違いはあるか

 

マクロライド(クラリス・ジスロマックなど)からビブラマイシンに変更すると解熱までどれくらいかかる?

■ 発熱は、少なくとも1回の38°C以上の体温と定義され、解熱は、解熱剤の使用ない24時間以内に3回連続で体温が38°C未満と定義し、解熱までの期間(time-to-defervescence;TTD)は最短12時間だった。

■ マイコプラズマは、PCRで特定された。

■ マクロライドからドキシサイクリンに切り替えられた場合、ビブラマイシンは初日4mg/kg/日、以降2mg/kg/日×9日間、しかし重症例はビブラマイシン4mg/kg/日×10日間もしくはレボフロキサシン5mg/kg/日×10日間を投与された。

■ 得られた計257例の痰のうち、18歳以下208例の患者の痰が分析された。

■ 208例中57例(27.40%)からマイコプラズマが検出され、3例は他の菌との同時感染が検出されたため本研究から除外された。

■ さらに、全54検体で23SのリボソームRNA遺伝子のVドメインの塩基配列分析が実施されたが、6検体はPCRが増幅されなかったため、本研究から除外された。

A2063Gポイントミューテーションは、48例中34例(70.83%)で検出されたが、48例中14例(29.16%)はVドメインの変異が認められなかった

■ マクロライド耐性マイコプラズマ(MRMP)と、マクロライド感受性マイコプラズマ(MSMP)に関し、年齢、性別、白血球、CRP、AST、寒冷凝集素を比較したが、有意差は認められなかった。

■ MRMPによる市中肺炎34例は入院時β-ラクタム+マクロライドで加療開始され、16例(47.05%)がマクロライドからビブラマイシンへ切り替えられたが、18例は入院期間中マクロライドが継続された。

マクロライドを投与された患者のうち24時間以内に解熱したのは1例(5.56%)のみで、TTDは123.33±59.05時間だった。

ビブラマイシンを投与された患者は全例24時間以内に解熱し、平均TTDは13.50±4.10時間であり、マクロライド投与群に比較して有意に短縮された(P = 0.0001)

■ MSMPによる市中肺炎患者の平均TTDは80±39.80時間であり、MRMP群より短かったが統計的に有意でなかった(P = 0.0862)。

■ MSMP群3例はビブラマイシンを投与され、平均TTDは16±6.90時間であり、2例はレボフロキサシンを投与され平均TTDは72±33.90時間だった。

平均TTDは、ビブラマイシンとマクロライド群で有意に異なった(P = 0.048)

 

マクロライド系抗菌薬で効果不十分なマイコプラズマ肺炎でも、ビブラマイシンに変更すると24時間以内に多くは解熱した。

■ 香港のマクロライド耐性マイコプラズマ肺炎は、市中感染型マイコプラズマ肺炎全体の70%を占める一方、ビブラマイシンはマクロライド耐性マイコプラズマでも24時間以内に解熱し、マクロライドより有意に効果的だったとまとめられます。

■ マクロライド耐性マイコプラズマ(MRMP)は、2001年に日本で初めて報告され、現在は中国で最も高90%以上を占めるとされており、大きな問題となっています。現状でもマクロライドが第一選択であり、他の抗生剤はあくまで”無効のとき”となってはいるのですが、第一選択でトスフロキサシン(商品名オゼックス)を使用される先生も多くなっている印象です(もちろん、自分自 身としては厳に慎むべきとは思っています)。

■ 昨日、ドキシサイクリン(商品名ビブラマイシン)は、ミノサイクリン(商品名ミノマイシン)に比較して、小児に関して安全に使用できる可能性があるという報告を提示しました。一方、ビブラマイシンに関して、本邦の添付文書にも「小児等(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児等)に投与した場合、歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがあるので、他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること」と記載があるため、現実的には使用を推奨することは難しいかとは思いますが、マクロライド耐性マイコプラズマに対しては、効果が十分期待できると言えます。

■ 「より安全な次の一手」は持っておいて損はないでしょう。

なお、肺炎マイコプラズマに対する治療指針(日本マイコプラズマ学会;http://square.umin.ac.jp/jsm/shisin.pdf)や、小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方(日本小児科学会;https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=36)もご参考ください。

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