保湿剤の臨床効果: システマティックレビュー

Lindh JD, Bradley M. Clinical Effectiveness of Moisturizers in Atopic Dermatitis and Related Disorders: A Systematic Review. Am J Clin Dermatol 2015; 16:341-59.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26267423

 

保湿剤の効果に対するシステマティックレビュー

■ 昨日、英国における保湿剤に対するコンセンサスステートメントをご紹介しました。

■ 今度は保湿剤治療に対するシステマティックレビューです。長いレビューだったので一部しか読めていませんが、保湿剤を評価したシステマティックレビューはほとんど見たことがなく、貴重です。

■ しかし、それぞれの研究の不均一性のためにメタアナリシスは出来ず、あくまでレビューにとどまっていることに注意してください。

 

P: 2015年6月までの MEDLINEとEmbaseから抽出された、保湿剤の臨床効果を比較しているランダム化比較試験と、TEWL・角質水分量の前後比較研究 45論文(48研究、3262例)

E: 保湿剤使用

C: –

O: 臨床症状、TEWL、角質水分量の改善があるか

 

結果

■ 研究デザインとアウトカム基準が異なるため、メタアナリシスアプローチは実行不可能だった。

■ また、研究の多く(32研究)は、アトピー性皮膚炎患者で行われており、研究期間は多くは2-6週間だったが、その範囲は90分から6ヵ月と広範囲だった。

 

臨床効果

 

■ 11研究(854例)は、保湿剤(様々な種類あり)と無処置群の臨床効果を比較しており、4研究は保湿剤の臨床効果をSCORADで測定し、すべてが小児アトピー性皮膚炎に対する2-8週間追跡した研究だった。

■ 3研究では有意な臨床効果を示すことができなかったが、全体としては保湿剤を使用した患者は14-27%SCORADが改善した

■ 更に、そのうち1研究は、SCORADの評価項目のうち、特にそう痒が58%低下(p < 0.01)と乾燥が91%の低下(p < 0.01)に関して有意な効果を示した。

 

QOL

■ 小児アトピー性皮膚炎患者335人に対する3研究はQOLを評価した。

■ 2研究はQOLの改善と関連があったが、統計的な評価をしていなかった。1研究はQOLの改善を示さなかった。

 

保湿剤の種類

■ 10のランダム化比較試験(868人)が、尿素の臨床効果を調査した。

■ そのうち3研究は、手湿疹、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬患者に対し、尿素製剤群と無処置群をを比較した。

■ 2研究は6ヶ月間の再燃期間に対する有効性を示唆したが、1研究は有効性を示すも統計学的有意差を示さなかった。

■ 4研究は、尿素製剤と他の保湿剤(保湿成分を含まない”基剤”を含む)を比較し、3研究はアトピー性皮膚炎、1研究は魚鱗癬に対してだった。

1研究はステロイド外用で改善した後の有意な再燃期間の延長を示唆し、2研究では尿素は乾燥に関し、グリセリンより優れていた(p = 0.024)。しかし、尿素はグリセリンと比較して、副作用として有意に刺激感を生じた。

 

保湿剤の効果

■ 保湿剤は、SCORADにより評価された臨床症状が0から2.7ポイント改善した。

■ また、TEWLは0~-12.2g/m2h改善し、角質層水分量が+8-+100%改善した。

■ 個々の保湿剤間の直接の比較は十分行えていないが、例えば、プロピレングリコール、乳酸、セラミド、アルミニウム・クロロ水和物よりも、尿素やグリセリンが、より研究的に臨床効果が裏付けられているようである

 

 

コメント

■ 保湿剤による研究は決して十分ではなく、メタアナリシスができなかったようですが、特にかゆみや乾燥に効果が高いとまとめられます。尿素の評価が高かったのですが、刺激感の副作用が多いとされていました。

■ 本邦で頻用されるヘパリン類似物質(商品名:ヒルドイド)は評価されておらず、本邦の医療セッティングで考えると今後十分な評価が必要なのではないかと考えます。

■ 自分としては、日常診療に使用できる保湿剤に関し、保湿剤それぞれの比較試験が必要だろうと思っていますし、保湿成分の臨床効果も比較するべきだろうと思います。

■ 内服薬などと異なり、外用薬は「塗布する」は毎日続けていくことがずっと大変です。そこで、塗布回数による臨床効果も考えていくべきでしょう。

■ 回数だけでなく塗布量による違い、基剤による違いも評価していく必要性があります。

■ このように、”スキンケア”は患者さんのみならず、一般の方々にとっても馴染みの深い用語になっているにも関わらず、十分なデータがなく、色々なセッティングでの臨床試験も極端に不足しています。

■ さらに検討が進むことを期待したいと思います。