アトピー性皮膚炎の痒みは夜8時から深夜が最も悪化する

なぜ夜になるとアトピーが悪化するのか?

アトピー性皮膚炎の最も辛い症状は痒みです。この痒みは単に不快なだけでなく、病気をさらに悪化させる原因にもなります。多くの患者さんが「夜になると痒みがひどくなる」と訴えており、これが睡眠不足や精神的なストレスの原因となっています。

人間の体には「体内時計」があることが知られています。これは約24時間のリズムで体の様々な機能をコントロールしており、体温や血液の流れ、肌の状態なども時間によって変化します。
■ 最近の研究では、アトピー性皮膚炎患者の肌のバリア機能も時間によって大きく変化することが明らかになっています。健康な人の肌は夜に向かってバリア機能が回復するのに対し、アトピー患者の肌では逆に夜間にバリア機能が最も弱くなるという「逆転現象」が起きていることが分かっています。

Iwanaszko, M., et al (2024). Circadian Rhythms in Skin Barrier Function in Atopic Dermatitis: A Pilot Study. J Biol Rhythms, DOI 10.1177/07487304231220695.

■ 先行研究で、アトピー性皮膚炎の痒みも夜に強くなることは分かっていましたが、1日を通してどのような変化をするのかは詳しく調べられていませんでした

■ 最近、「クロノセラピー」という新しい治療法が注目されています。これは体内時計に合わせて薬を使うタイミングを調整することで、より効果的な治療を行う方法です。
■ 例えば、別の皮膚病である乾癬では、夜に薬を塗ると昼間に塗るよりも効果が高いことが分かっています。また、アレルギー疾患の治療でも、抗ヒスタミン薬を夜に飲むと朝の症状がより良く抑えられることや、舌下免疫療法を夜に行うと効果が高まることが報告されています。

Haye, R., et al (2005). Morning versus evening dosing of desloratadine in seasonal allergic rhinitis: a randomized controlled study. Clinical & Molecular Allergy, DOI: 10.1186/1476-7961-3-3.

Chen, Z., et al (2022). Morning versus evening dosing of sublingual immunotherapy in pediatric house-dust-mite asthma. Frontiers in Pediatrics, DOI: 10.3389/fped.2022.892572.

■ 皮膚科の領域では、夜間に薬の経皮吸収率が上がるため、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を夜に使用すると効果が高まりながら副作用が減るという臨床報告もあります。さらに、最新の生物学的製剤であるデュピルマブでも、自己注射を行う時間帯によって治療効果に違いが生じることが明らかになっています。

Aktas, H. (2025). Chronotherapy and Its Dermatological Implications: A Preliminary Review. Turk J Clin Res, DOI: 10.63909/1453007.

■ そこで、アトピー性皮膚炎の痒みがいつ強くなるのかを正確に調べることで、薬を使う最適なタイミングを見つけ、より良い治療法を開発できるのではないかと考えました。
■ そんな「クロノテラピー」に関係した最近の研究結果を共有します。

Sang X, Lu J, Tan L, Zeng J, Wang D, Guo A, et al. The Circadian Rhythm of Itching among 241 Adults with Atopic Dermatitis: A Cross-sectional Study. Acta Derm Venereol 2024; 104:adv35427.

中国の病院で2021年9月から2023年10月にかけて、18歳から87歳のアトピー性皮膚炎患者241人を対象に、質問票を用いて痒みの24時間パターンを6つの時間帯(4時間ごと)に分けて調査した。

背景・目的

■ アトピー性皮膚炎患者における掻痒のパターンは体系的に研究されていない。
■ そこで、本研究では、単一施設の参加患者(n=241)における掻痒の概日リズムを評価するために、質問票を用いて成人アトピー性皮膚炎患者の掻痒パターンを評価することを目的とした。

方法

■ 患者の掻痒の概日リズムと強度を評価するために自己記録式質問票を使用した。

■ さらに、患者の疾患重症度(湿疹面積・重症度指数[EASI])と生活の質(皮膚科生活質指数[DLQI])も評価した。

結果

■ 掻痒は20:00から00:00の間に最も頻繁に発生し(74.69%)、最も重篤(62.66%)であり、04:00から08:00の間に掻痒を経験した患者数は最も少なかった(25.31%)。

■ DLQIスコアとEASIスコアは、いずれも平均および最大掻痒強度と相関した(それぞれr=0.582、r=0.533、r=0.539、r=0.517、いずれもp<0.001)。
DLQIスコアとEASIスコアは平均掻痒強度と関連し(それぞれB=0.179、B=0.204、95% CI: 0.112~0.246、95% CI: 0.096~0.313、いずれもp<0.001)、EASIスコアは男性と家族歴と関連していた(それぞれB=0.285、B=0.287、95% CI: 0.094~0.476、95% CI: 0.096~0.478、いずれもp=0.003)。

結論

成人アトピー性皮膚炎患者は掻痒の概日リズムを示し、この研究結果は治療アプローチにポジティブな影響を与える可能性がある。

 

 

 

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