母の摂取した卵は母乳から児に移行するが、むしろアレルギー予防に働く

授乳中に卵を食べると、母乳中に卵は分泌されるか?そして子どもの卵アレルギー発症に影響するか?

■ 現在、子どものアレルギー予防のために母の食物制限することは勧められておらず、むしろ、バランス良く多種の食物を摂取するように指導されています。以前は、除去食が勧められていたことを考えると180度変わっていると言えるでしょう(変更はもう随分前になりますが)。

■ 一方で、母乳中に母が摂取した食物が分泌されることはすでに報告されており、これが「感作(アレルギーを悪くする)」に働くという根拠になっていました。一方、「経口免疫寛容(摂取することで受け入れるほうに働く=アレルギーを良くする、予防する」という考えが大きくなってきています。

■ 今回は、母が食べた食物が母乳から分泌され、子どもにとってはむしろ寛容(=卵を受け入れる反応)に働いているのではないかと仮定し検討した報告です。

 

PECO
P: 妊娠週数36-40週の妊婦120人
E1: 出生後6週まで>4個/週の卵摂取(卵高摂取群) 40人 
E2: 出生後6週まで1-3個/週の卵摂取(卵低摂取群) 44人
C: 出生後6週まで卵摂取なし(卵非摂取郡) 36人
O: 2、4、6週の母乳中オボアルブミン濃度と生後6週、16週の児の血漿中卵特異的IgEとIgG4

 

Metcalfe JR, et al. Effects of maternal dietary egg intake during early lactation on human milk ovalbumin concentration: a randomized controlled trial. Clin Exp Allergy 2016. [Epub ahead of print]

授乳中の母の卵摂取量と、乳児の卵特異的IgG4の関係を検討した。

■ 母乳中オボアルブミン濃度分析は、0.1-4ng/mLの検出範囲で実施され、4ng/mLを越える場合は希釈し測定を繰り返した。

■ 参加者の卵摂取量は日誌記録に基づき、週ごとの卵摂取量(IQR)の中央値は、卵高摂取群 5.0個(4.1-6.7)、卵低摂取群2.4個(1.8-3.0)、卵非摂取郡 0.0個(0.0-0.25)であり、卵非摂取郡の偶然の卵摂取の大部分は一般的な食品(例えばケーキ、マヨネーズ、ビスケット、麺)に含有される少量の卵だった。

母の卵摂取量は、母乳中のオボアルブミン濃度と関連があり、週あたりの卵摂取量が増加するほど、母乳中オボアルブミン濃度は平均25%増加した(95%CI:5.48%;P = 0.01)

母乳中オボアルブミン濃度は、卵非摂取群より卵高摂取群(>4個/週)」群で有意に高かった(P = 0.04)

■ 乳房上皮の透過性は、母乳のNa:K比を測定することで評価された。母親の1/3は母乳中オボアルブミンが検出されなかったが、乳房上皮透過性と母乳中オボアルブミン濃度に関連は認められなかった。

週あたりの摂取される卵が増加するほど、乳児の卵特異的IgG4は平均的22%(95%CI:3.45%)増加した(P = 0.02)

管理人注
IgG4とは、一般に防御抗体と称され、高い方が耐性(食べられる)が誘導されている指標です。

■ 生後6週では、検出可能な卵特異的IgE抗体価を認めなかった(n = 82)。

■ 生後16週では、84人中4人(4.8%)の乳児で卵特異的IgE抗体価を認め、2人(2.4%)のみ>0.35kUA/Lであり、卵低摂取群に含まれた。その他の検出可能な卵特異的IgE抗体価(0.1-0.35kUA/L)の児は、1人が卵高消費群、1人が卵非摂取群だった。

 

授乳中の母が卵を摂取すると母乳に微量の卵が分泌されるが、むしろ子どもの卵アレルギーを予防する。

母が卵を摂取することは、母乳中のオボアルブミンを増加させ、乳児の経口免疫寛容を誘導する可能性があるとまとめられます。

■ ただし、感作された群が少なかったこともあり、感作に関して有意な差を確認できなかったようですし、また、児の卵アレリギーを明らかに予防するまでには至っていません。ですので、授乳中はガイドライン通り、自由に摂取していただくでよさそうです。

■ 一方、妊娠中に関しては、妊娠初期にピーナッツや卵を摂取することは子どものアレルギー疾患を減らすかもしれないという報告もある一方で、摂取しすぎはアレルギーを増やすという報告もあります。

Maternal consumption of peanut during pregnancy is associated with peanut sensitization in atopic infants.

■ 妊娠中に関しても、バランス良く摂取という指導がやはり良さそうです。

■ 同グループは、すでに母の卵摂取量と摂取方法が8時間以内で母乳中の卵タンパク質(オボアルブミン)濃度に影響することを証明しており(Palmer DJ,et al., Clin Exp Allergy 2005; 35:173-8.)、この研究につながったようです。

Effect of cooked and raw egg consumption on ovalbumin content of human milk: a randomized, double-blind, cross-over trial.

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