ワセリンは、皮膚の抗菌作用とバリア機能を改善させる

ワセリンの生理的効果を示した研究。

■ ワセリンは、日常診療で非常に良く使われる軟膏です。その生理的効果に関して検討した研究結果です。

 

P: 中等症のアトピー性皮膚炎患者13人(SCORAD平均39)、健康な被検者36人

集団1: AD患者29人(女性18人、男性11人;19-62歳[中央値38歳]、SCORAD平均39)+ADのない13人

集団2: 健常ボランティア20人(女性8人、男性12人;18-80歳[中央値50.5歳])

E: ワセリンで閉塞した皮膚

C: コントロール、Finnチャンバーで閉塞した皮膚

O: RT-PCR・遺伝子アレイ・免疫組織化学・免疫蛍光を使用し検討された皮膚分子および構造的効果

 

結果

■ 集団1では、ワセリン(白色ワセリン)を、フィン・チャンバーで閉塞し48時間後に取り除き72時間後(ワセリン除去後24時間)に皮膚生検し、計2つの生検標本が得られた(ワセリン塗布・対照)。AD患者では、湿疹のない箇所でワセリンを塗布された。

■ 集団2では、最初の5人は、対照、フィン・チャンバーでワセリンで閉塞する皮膚、フィン・チャンバー単独で閉塞をしている皮膚から生検した。48時間では、対照、閉塞のみ、ワセリン塗布に関し、72時間では閉塞のみ、ワセリン塗布の計5回の生検標本を得た。のこり20人では、生検回数を最小限にするために、3回の生検を受けた。

ワセリンで閉塞した皮膚では、対照およびフィンチャンバーによる閉塞のみの皮膚と比較し、抗菌ペプチド(S100A8 /倍数変化[FCH]、13.04; S100A9 / FCH、11.28; CCL20 / FCH、8.36; PI3 [エラフィン] / FCH15.40; リポカリン2 / FCH 6.94、ヒトβ-ディフェンシン2 [DEFB4A] / FCH、4.96;P < .001 )、自然免疫遺伝子(IL6、IL8およびIL1B; P <.01)の有意なアップレギュレーションが認められた

■ また、バリア分化のカギとなる指標(フィラグリンとloricrin)の発現を誘導し、角質層厚を増加させ、正常にみえる皮膚やAD皮膚(バリア障害と免疫障害がある)で有意にT細胞を減少させた。

 

ワセリンは抗菌作用をもち、皮膚バリアも改善させる

ワセリンは、強い抗菌作用と皮膚バリアを改善させるとまとめられます。

■ すでに、外来手術患者の手術後の処置で、ワセリンとバシトラシン(抗生剤)塗布に差がないことが大規模無作為試験で明らかにされているそうです。

■ ただし、この論文は「ワセリンが一番いい」と言っているわけではありません。

■ 実際に、アトピー性皮膚炎の再燃に関しては、保湿成分が含まれていたほうが少なかったという報告があります。

■ ハイリスク新生児に対する保湿剤の予防的塗布が、アトピー性皮膚炎の発症を予防することから、さまざまな保湿剤の効果の差をみるための基礎的知見になるのでないかと結ばれていました。

 

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