アトピー性皮膚炎があるとインフルエンザワクチンの効果が下がる?

アトピー性皮膚炎は全身的な免疫が下げる可能性が指摘されています。では、予防接種の効果はどうでしょうか?そのテーマの検討。

 以前、アトピー性皮膚炎は皮膚感染症以外の感染症のリスクも上げるかもしれないという報告をご紹介いたしました。

 つまり、アトピー性皮膚炎は皮膚の感染症だけでなく免疫を下げる可能性があるということです。

 そうならば、予防接種の効果も下げるかもしれません。

 

PECO
P: 2012~2013年シーズンにインフルエンザワクチンを受けた18~64歳 347人
E1: 中等症から重症のアトピー性皮膚炎がありインフルエンザワクチンを皮内注射 105人
E2: 中等症から重症のアトピー性皮膚炎がありインフルエンザワクチンを筋肉注射 105人
C1: 非アトピー参加者 皮内注射 114人(うち、ランダム化されていたのは36人)
C2: 非アトピー参加者 筋肉注射 23人
O: 血清防御(予防接種28日後のHemagglutination-inhibition (HAI)抗体価40倍以上)を達成した率

 

結局、何を知りたい?

✅アトピー性皮膚炎のある患者さんと、アトピー性皮膚炎のない患者さんを比べて、インフルエンザワクチンの抗体の上がり方に違いがないかどうかを知ろうとしている。

 

 

Leung DY, et al. A clinical trial of intradermal and intramuscular seasonal influenza vaccination in patients with atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol 2017.[Epub ahead of print]

インフルエンザワクチンを接種した成人に関し、アトピー性皮膚炎とワクチンに対する抗体上昇率を調査した。

 非アトピー性とは、本人もしくは第一親等にアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーがないと定義された。

 SASCは、黄色ブドウ球菌が培地で生育したもの(S aureus growth in skin culture)と定義された。

 全体として、アトピー性皮膚炎を持つ参加者の42%は、黄色ブドウ球菌を保菌していた。

 インフルエンザB、H1N1、H3N2の血清防御率は、(1) 皮内予防接種を受けたアトピー性皮膚炎のある参加者、(2)皮内および筋肉内予防接種を受けたアトピー性皮膚炎のある参加者に差はなかった。

 インフルエンザBに対する血清防御率は、黄色ブドウ球菌を保菌しているアトピー性皮膚炎参加者において、保菌していないアトピー性皮膚炎参加者より低かった(11%対47%; OR 0.14; 95%CI(0.03-0.49); P < .001)。

 インフルエンザB型に対する血清防御率は、中等症アトピー性皮膚炎参加者において有意に低かった(6%対51%; OR 0.06; 95%CI(0.00-0.50); P = .002)。

 また同様に、予防接種30日以内に皮膚に黄色ブドウ球菌が検出される参加者は、インフルエンザB型に対する血清防御が有意に低かった(0%対57%; OR、0.00; 95%CI(0.00-0.40); P =.004)。

 インフルエンザA型H1N1株血清防御率がは、アトピー性皮膚炎があり黄色ブドウ球菌を保菌する参加者は、血清防御率が低い傾向があった(74%対91%; OR、0.27; 95%CI(0.04-1.37); P =.09)。

 

結局、何がわかった?

✅皮膚に黄色ブドウ球菌(アトピー性皮膚炎など湿疹があるとつきやすい)という菌がついている患者さんは、ついていない患者さんより、インフルエンザB型に対する抗体の上昇は0.14倍になった。

✅予防接種前の30日以内に皮膚に黄色ブドウ球菌がついている患者さんは、インフルエンザB型に対しての抗体が全く上がっていなかった。

✅アトピー性皮膚炎があって黄色ブドウ球菌がついていると、インフルエンザA型の抗体も0.27倍上がりにくかった。

 

黄色ブドウ球菌を保菌しているとインフルエンザワクチンの効果が下がる。

 皮内接種(筋肉内接種ではなく)の予防接種後、黄色ブドウ球菌を保菌するアトピー性皮膚炎のある参加者は、(1)インフルエンザBに対する血清抗体価と血清抗体価陽転率が低値であり、HAI抗体価も低く、(2) インフルエンザA型H1N1に対する血清抗体陽転率も低いとまとめられます。

 アトピー性皮膚炎のある多くの患者が黄色ブドウ球菌を保菌しているため、インフルエンザ予防接種は筋肉注射が優先されなければならないと述べられていました。

 先行研究において、ブドウ球菌スーパー抗原は、リンパ節の皮膚抗原提示細胞の移動を誘発して、皮膚から樹状細胞を減少させることを示されており(Cell Immunol 1996; 171:240-5.)、また、黄色ブドウ球菌産生物質は、B細胞やプラズマ芽球の抗体産生反応に破壊的な影響を及ぼすのだそうです( Nat Rev Microbiol 2015; 13:529-43.)。

 本邦においては積極的に筋肉注射で予防接種は推奨されていませんから、(筋肉注射にならない程度に)少し深めに接種したり、なにより黄色ブドウ球菌の保菌が影響するわけですから、アトピー性皮膚炎自体を良くすることを目標にしようと改めて思いました。

 

 

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今日のまとめ

✅黄色ブドウ球菌を保菌するようなアトピー性皮膚炎は、インフルエンザワクチンの効果を下げるかもしれない。

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