Yasukochi Y, et al. Reduction of serum TARC levels in atopic dermatitis by topical anti-inflammatory treatments. Asian Pac J Allergy Immunol 2014; 32:240-5.
TARCはアトピー性皮膚炎の重症度の指標。
■ ここ数日、TARCの有用性に関し、重症薬疹(DIHS)にも役立つかもしれないという報告や、アトピー性皮膚炎以外の疾患にも有用かもしれないという報告を御紹介してきました。
■ しかし、実際に使われるのはアトピー性皮膚炎の管理が中心になります。
■ そこで今回は、九州大学皮膚科のグループからの、治療前後でTARCがどれくらい低下するのかを検討した報告を紹介させていただきます。
E: ステロイド外用薬使用量
C: -
O: 毎週のAD患者のステロイド外用薬投薬量と血清TARC低下率に関連はあるか
結局、何を知りたい?
✅成人のアトピー性皮膚炎に対し、ステロイド軟膏をどれくらい塗ると、皮膚炎症を反映するTARCが下がるかということを知ろうとしている。
結果
■ 血清TARCを測定したアトピー性皮膚炎(AD)患者計349人(男性184人、女性165人)が登録され、TARCが一度だけ測定された188人、シクロスポリンやプレドニゾロンといった免疫抑制薬内服、もしくは紫外線療法を受けた54人、14歳以下の小児 13人、TARCの測定間隔が3ヵ月を超えている36人、TARCが≦700 pg/mLである軽症患者 2人は除外され、最終的に56人が検討された。
■ 同じ患者で3か月以内のTARC検査を複数ある場合、先の検査を優先した。
■ 56人は連続的に抗炎症外用薬で治療を受ける間、全員に経口抗ヒスタミン剤と保湿剤も処方された。
■ 患者は、TARC≧3001 pg/mL(重症群)と701~3000pg/mL(中等症群)の2群に分けられた。
■ また、TARCの週あたりの減少を算出するために、治療前と治療後の週数の中央値で2群に分けられた。
■ ステロイド外用薬およびタクロリムス外用薬量は、患者にどれくらいの使用したかを尋ねたり、外用薬の本数をチェックしたり、週あたりのステロイド外用薬の処方量によって計算された。
■ 週あたりの抗炎症薬の使用量は、総相当量(total equivalent amount;TEA)として示された(ステロイド外用薬= Storong x1; Mild x0.5; Very Strong x2; Strongest x4、タクロリムス軟膏0.1% ×1; 0.03% x0.5)。
■ 56人の治療前の血清TARCは、829から52000pg/mL(mean±SE; 7076.48±1336.73pg/mL)であり、外用薬治療3ヵ月以内のTARCは、159から6740pg/mL(1554.71±198.07pg/mL)だった。
■ 中等症群の治療前TARC(1847.89±137.60pg/mL)は、治療後有意に低下した(971.11±113.88pg/mL)。
■ 重症群も、治療前TARC(12305.07±2246.94pg/mL)も治療後低下した(2138.32±342.48pg/mL)。
■ 重症群の変化率は、中等症群群より有意に急速だった(p < 0.001)。
■ 週あたりのTARC減少は、週当たりのTEAと有意に相関し、中等度から重症のアトピー性皮膚炎患者におけるTARCが、1週間あたり9.94pg/mL低下するために、ストロングクラスのステロイド外用薬もしくは、ステロイド換算のタクロリムス外用薬を1g必要とした。
■ 初期のTARCが高いと外用薬をより多く必要とし、TARCはより早く低下した。
■ 血清TARCと末梢血好酸球数は、有意に相関した。
結局、何がわかった?
✅ステロイド外用薬の使用量が多いほど、TARCは低下(皮膚の炎症が低下)し、それは重症のアトピー性皮膚炎のほうが早く低下した。
ステロイド外用をしっかり使用すると皮膚の炎症も減る、TARCはその指標になります。
■ 血清TARC低下率とステロイド外用使用量は、強く相関しているとまとめられます。
■ TARCと好酸球数は有意に相関しているが、TARCはより広範囲の値を示すため、ADの重症度をモニターするためにより臨床的に役立つようであるとされています。
■ Limitationとして、(1) TEAが抗炎症薬の外用量の実際の使用量を表さないかもしれないこと、(2) 治療前後の3ヵ月は、量と効果の関係を調べるのは長すぎる可能性があること、(3)抗ヒスタミン剤と保湿剤の薬効を除外できていないことが挙げられていました。
■ もちろん、この報告は、「たくさんステロイド外用薬を使おう」と勧めているわけではなく、「不十分な外用量では十分改善しない」ことを示唆する報告といえると思います。
■ さらにこの先、減量フェーズにどうなるか、また、どれくらいのTARCだと再燃しやすいのかを知りたいところです。
今日のまとめ
✅TARCはアトピー性皮膚炎の治療により低下し、重症であるほうが低下率が大きい。