乳児血管腫に対するプロプラノロールはステロイドと副作用が変わらない
 

 

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 乳児の血管腫(いちご状血管腫)に対し、プロプラノロール内服が効果があることが報告され、本邦でも商品名ヘマンジオルとして使用されるようになりました。

βブロッカー(プロプラノロール)は乳児血管腫に効果的: ランダム化比較試験

 一方、ヘマンジオルは重篤な副作用は多くはないものの懸念が残っており、先行したステロイドとの比較試験が行われた結果が報告されていましたのでご紹介いたします。

 

P: ソウル国立大学に受診した、心機能に異常のない乳児期血管腫(infantile hemangioma;IH)の乳児34人(男児15人、女児19人、平均年齢3.3ヵ月[0.3-8.2ヵ月])
E: プロプラノロール 1日総量2mg/kg/日 17人
C: 経口プレドニゾロンシロップ 2mg/kg/日 17人
O: プライマリアウトカム:16週後の治療反応

 

 結局、何を知りたい?

 ✅乳児血管腫に対するプロプラノロール(ヘマンジオル)内服が、ステロイド内服に比較して効果や副作用に差があるかということを知ろうとしている。

 

結果

 

 すべての参加者は、心機能は正常であり、試験開始まで乳児血管腫(IH)の治療を受けていなかった。
 プロプラノロール群(2mg/kg/d)の患者は、処置開始後の3日間は入院して副作用を観察され、16週間外来で加療された。
 ステロイド群(2mg/kg/d)は、最初から外来で加療開始し、16週間の加療を受けた。
 16週後の治療反応は、処置開始前と治療開始16週後に、血管腫容積によってMRIにより評価され、平均IH容積はプロプラノロール群14125mm3であり、ステロイド群は9349mm3だった(有意差なし)。
 intention-to-treat解析では、プロプラノロール群の処置反応率が95.65%であるのに対し、ステロイド群は91.94%であり、プロプラノロールは非劣性と判定された(95.65%対91.94%、差3.71%; 95%CI -15.43%~22.84%)
 容積減少は、プロプラノロール群(55.87%)はステロイド群(46.52%)より大きかったが、有意差はなかった(P=.27)
 プロプラノロール群における最初の薬物投与後の心拍(131.88対147.63bpm;P=.003)、体温(36.66°C対36.96°C;P=.04)と血糖値(103対121mg/dL;P=002)は、ステロイド群より有意に低かった。

 ステロイド群のうち2例は、成長障害を示した。
 一つ以上の有害事象は、31例の患者で観察された(プロプラノロール群16例、ステロイド群15例; P>.90)たが、群による有意差はなく、重篤な副作用は認めなかった

 

 結局、何がわかった?

 ✅乳児血管腫に対するプロプラノロール内服とステロイド内服は効果や副作用に差はなかった。

 

コメント

 

 プロプラノロール内服に関しては、上記のように先行研究があり、プラセボに対し有意に効果があることが示されています。

 ステロイド内服(プレドニゾロン2mg/kg/日×16週間)は、ちょっと小児科医としてためらわれる量と期間です。副作用は様々出ておかしくないでしょう。

 このような結果からも、乳児血管腫に対する治療としてプロプラノロール(ヘマンジオル)が普及してくるのは確かでしょう。

 一方で、プロプラノロール外用の報告もみられるようになりました。こちらも期待したいところですね。

いちご状血管腫にβブロッカー外用薬が有効? : 前後比較研究

 さらに、プロプラノロール内服にステロイド内服を併用したという症例報告(Br J Dermatol 2017; 176:1064-7.)がありましたので、ご紹介しようと思っています。

 

 今日のまとめ!

 ✅プロプラノロール(ヘマンジオル)内服はステロイド内服に比較して効果・副作用に差がない。

 

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