
Tan J, et al. Dietary Fiber and Bacterial SCFA Enhance Oral Tolerance and Protect against Food Allergy through Diverse Cellular Pathways. Cell Rep 2016; 15:2809-24.
今回は基礎分野の論文。
■ 今回は基礎研究です。”基礎”というと一般的な用語としては”簡単”というイメージですが、医学的には臨床論文より読みにくいことが多いです。
■ 私は臨床がメインですので、正直基礎論文は苦手です。でも、医学には避けて通れない、大事な分野です。本当は、基礎と臨床を両方理解して駆使できなくてはなりませんが、まだまだです、、。
■ 今回は、「食物繊維が食物アレルギーの予防に働いているかもしれない」というマウスの実験レベルでの報告。
マウスに食物繊維を多く含む食事をさせ、食物アレルギーに対して保護的に働く経路を調べた。
■ 西洋諸国における食物アレルギーの発生率は、ここ数十年で劇的に増加した。
■ 食物抗原に対する耐性は、制御性T細胞(regulatory T; Treg)の分化を促進する粘膜上のCD103+樹状細胞(dendritic cells ;DC)に依存している。
■ 我々は、マウスの高食物繊維食が経口免疫寛容を改善し、食物アレルギーから保護することを示す。
■ 高食物繊維摂食は微生物生態を再構成し、短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids;SCFA)、特に酢酸塩および酪酸塩の放出を増加させた。
■ 高食物繊維食は、CD103 + DCにおけるレチナールデヒドデヒドロゲナーゼ活性を増強することにより、経口免疫寛容を増強し、食物アレルギーから保護した。
■ この保護は、食事中のビタミンAに依存していた。
■ この食事摂取方法はまた、IgA産生を高め、T小胞ヘルパーおよび粘膜胚中心反応を強化した。
■ SCFAsの受容体であるGPR43またはGPR109A欠損マウスは、食物アレルギーを悪化させ、CD103 + DCをより少なくした。
■ したがって、食物成分(食物繊維およびビタミンAを含む)は、胃腸管における多数の防御経路を調節し、食物抗原に対する免疫応答性の低下に必要である。
論文から引用。グラフィカルアブストラクト。
結局、何がわかった?
✅ビタミンAを含む食物繊維は、寛容を導くCD103陽性樹状細胞(DC)の効力を増加させる。
✅食物繊維を豊富に含む食事は、腸内細菌叢および短鎖脂肪酸(SCFA)を介してピーナッツアレルギーからマウスを保護する。
✅食物繊維を豊富に含む食事の効果は、粘膜上皮のGPR43および免疫細胞GPR109aに依存する
✅食物繊維はTFHおよびIgA応答を促進する。
食物アレルギーと食物繊維。
■ ほぼ抄録だけなので、実験系の詳細をすっとばしてしまっていますが、食物繊維+ビタミンAという食事が、短鎖脂肪酸を介して食物アレルギーを予防しているという結果。
■ このまま人間に適応するのは難しいかもしれませんが、普段の食事を見直すきっかけになればと思います。
今日のまとめ!
✅食物繊維(+ビタミンA)を多く含む食事は、食物アレルギーの予防に働くかもしれない。