以下、論文紹介と解説です。
Lazarus SC, et al. Mometasone or Tiotropium in Mild Asthma with a Low Sputum Eosinophil Level. N Engl J Med 2019; 380:2009-19.
12歳以上の軽症持続性喘息患者295例をモメタゾン(吸入ステロイド)、チオトロピウム(長時間作用型ムスカリン拮抗薬)、プラセボにランダム化し、有効性を比較した。
背景
■ 軽症持続性喘息患者の多くにおいて、喀痰中の好酸球の割合は2%未満である(好酸球レベル低値)。
■ これらの患者に対する適切な治療法は不明である。
方法
■ この42週間の二重盲検クロスオーバー試験では、12歳以上の軽症持続性喘息患者295例にモメタゾン(吸入ステロイド)、チオトロピウム(長時間作用型ムスカリン拮抗薬)、プラセボを投与した。
■ 患者は喀痰好酸球レベル(<2%または≧2%)に従って層別化された。
■ プライマリアウトカムは、試験薬の1種類に対して事前に決められた特異的な反応を示し痰好酸球レベル低値である患者における、プラセボと比較してのモメタゾンに対する反応とプラセボと比較したチオトロピウムに対する反応だった。
■ 反応性は、治療失敗、喘息コントロール日数、1秒量を組み込んだ層別化された複合的アウトカムに従って決定され、0.025未満の両側P値が統計的に有意とした。
■ セカンダリアウトカムは喀痰中好酸球高値群と低値群の比較した結果だった。
結果
■ 73%の参加者は好酸球レベルは低値だった。
■ これらの患者のうち、59%が試験薬に対して異なる反応を示した。
■ しかし、モメタゾンまたはチオトロピウムに対する反応性は、プラセボと比較して有意差はなかった。
■ 好酸球低値の患者であり異なる治療反応性を示した患者のうち、モメタゾンより良好な反応を示したのは57%(95%信頼区間[CI] 48~66)であり、プラセボがより反応は良好だったのは43%(95% CI 34~52)だった(P=0.14)。
■ 一方で、チオトロピウムに対しては60%(95% CI 51~68%)が良好な反応を示し、プラセボに対しては40%(95% CI 32~49%)が良好な反応を示した(P=0.029)。
■ 好酸球高値の患者では、モメタゾンに対する反応はプラセボに対する反応より有意に良好であったが(74% vs 26%)、チオトロピウムに対する反応は良好ではなかった(57% vs 43%)。
結論
■ 軽症持続型喘息患者の大多数は喀痰中好酸球レベルが低値であり、プラセボと比較してモメタゾンまたはチオトロピウムに対する反応に有意差はなかった。
■ これらのデータは、好酸球レベル低値の患者に対する吸入ステロイドを他の治療と比較するために、臨床的に指示的な試験のための均衡を提供する。(Funded by the National Heart, Lung, and Blood Institute;SIENA ClinicalTrials.gov number, NCT02066298.)
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喀痰中好酸球により吸入ステロイド薬の効果が異なり、軽症・喀痰中好酸球低値の場合は吸入ステロイドの効果は薄い?
■ この報告は物議を醸し出していますが、喘息にはフェノタイプがあり、喘息への薬剤の効果を見極めつつ判定していく必要性があるということでしょう。
■ ただ、喀痰中好酸球を検査することは簡単ではありません。ますます呼気一酸化窒素の意味が大きくなってきている印象があります。
■ もちろん、喀痰中好酸球=呼気一酸化窒素ではありませんが相関はあることがわかっています。
今日のまとめ!
✅ 12歳以上の軽症持続性喘息患者に対する吸入ステロイド薬は、喀痰中好酸球低値(<2%)の場合は、有効性が低い。