吸入ステロイド薬のアドヒアランスは決して高くはない。
■ 吸入ステロイド薬は、気管支喘息のコントロールにとても重要な位置を占めています。
■ しかし、残念ながら、吸入ステロイド薬のアドヒアランスは良いとは言えません。
■ 吸入ステロイド薬は1日1回の製剤もあります。
■ もしくは1日2回の製剤を、改善すれば1日1回にすることも考慮できます。
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では、1日1回と2回で、アドヒアランスに差はあるのでしょうか?
■ 最近、コロラド小児病院・コロラド大学で行われ、JACI in practiceに報告された研究結果を共有します。
De Keyser H, Vuong V, Kaye L, Anderson WC, III, Szefler S, Stempel DA. Is Once Versus Twice Daily Dosing Better for Adherence in Asthma and Chronic Obstructive Pulmonary Disease? The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2023; 11:2087-93.e3.
喘息患者6294人とCOPD患者1791人を、電子薬物モニターを用いて、患者の吸入器が作動した日付と時刻を記録し、1日1回吸入と1日2回吸入のアドヒアランスを確認した。
背景
■ 喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者は、1日に1回または2回、コントローラー吸入薬を処方されることがある。
目的
■ 投与スケジュールおよび年齢によるコントローラーのアドヒアランス(服薬遵守)の違いを評価することである。
方法
■ 電子薬物モニター(EMM)を用いて、Propeller Healthプラットフォームを使用する患者の90日間にわたる吸入器作動の日付と時刻を記録した。
■ 処方された吸入スケジュールは自己申告とした。
■ 1日1回スケジュールと1日2回スケジュールの比較を、年齢で調整した回帰分析を用いてレトロスペクティブに評価した。
結果
■ 計6294人の喘息患者と1791人のCOPD患者が対象となった。
■ 平均して、1日1回投与群は1日2回投与群よりも1日のアドヒアランスの中央値(四分位範囲[IQR])が有意に高かった(喘息 63.3[IQR 31.1-86.7]% vs 50.3[IQR 21.1-78.3]%、P<0.001;COPD 83.3[IQR 57.2-95.6]% vs 64.7[IQR 32.8-88.9]%、P<0.001)。
■ このパターンは、4~17歳の喘息患者を除き、すべての年齢層で持続した。
■ 服薬アドヒアランスが最も低かったのは、若年成人集団(18~29歳)だった。
■ 80%以上の服薬アドヒアランスを達成した患者の割合は、1日1回服薬と1日2回服薬で、喘息(34.3% vs 23.6%、P < 0.001)とCOPD(54.8% vs 38.6%、P < 0.001)で有意差があった。
■ 1日1回使用者と1日2回使用者のアドヒアランス80%以上の調整オッズは、喘息で1.36(95%信頼区間:1.19-1.56、P < 0.001)、COPDで1.73(95%信頼区間:1.38-2.17、P < 0.001)と評価された。
■ 1日1回服薬のCOPD患者のほとんどは朝と夜に服薬していたが、他のすべての喘息およびCOPD群では、朝と午後/夜の服薬に差はなかった。
結論
■ 喘息およびCOPD患者において、1日1回投与と1日2回投与とでは、1日1回投与の方が吸入を遵守する傾向が高かった。
■ COPD患者は喘息患者よりもアドヒアランスが高かったが、これはコホートの年齢が高いことを反映している可能性がある。
■ 服薬アドヒアランスの向上が増悪に及ぼす影響については、今後の分析課題である。
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