高IgE症候群を含む遺伝性皮膚疾患に、デュピルマブは有効か?

アトピー性皮膚炎治療に有効なデュピルマブ、遺伝性皮膚疾患への効果は?

■ デュピルマブは2型サイトカインをターゲットとするバイオ製剤で、アトピー性皮膚炎の治療に使用されるようになりました。
■ 最近は生後6ヶ月からのアトピー性皮膚炎にも保険適用がひろがっています。

■ 一方、皮膚の炎症を起こす疾患として、『遺伝性皮膚疾患』であるネザートン症候群、表皮水疱症、高IgE症候群などがあります。

■ これらにデュピルマブが保険適用となっているわけではありませんが、高IgE症候群は、アトピー性皮膚炎との鑑別を要する疾患でもあります。

■ 有効性があるのかどうか気になり調べてみると、システマティックレビューが見つかりました。

Wu P-C, Dai Y-X, Li C-L, Chen C-C, Chang Y-T, Ma S-H. Dupilumab in the treatment of genodermatosis: A systematic review. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft 2023; 21:7-17.

ネザートン症候群、表皮水疱症、高IgE症候群などの特定の遺伝性皮膚疾患を持つ37人の患者が対象に、デュピルマブの有効性を調査した研究をシステマティックレビューした。

背景

■ デュピルマブはIL-4とIL-13のシグナル伝達経路を阻害し、アトピー性皮膚炎の治療に有効である。
■ ネザートン症候群、表皮水疱症、高IgE症候群などの特定の遺伝性皮膚疾患は、2型炎症の活性化を伴うTh2に偏奇した疾患である。

方法

■ そこで、遺伝性皮膚症の治療におけるデュピルマブの治療的役割を調査するために、この系統的レビューを行った。
■ PubMed、Embase、Web of Science、Cochraneの各データベースを対象に、開始から2021年12月13日までの系統的検索を行った。
■ このレビューでは、「デュピルマブ」、「遺伝性皮膚症」、「ネザートン症候群」、「魚鱗癬」、「表皮水疱症」、「高IgE症候群」を含む関連用語を用いた研究を対象とした。

結果

■ 最初の検索で2,888件の結果が得られ、そのうち28件の研究と37人の遺伝性皮膚症患者が登録された。
■ 評価された遺伝性皮膚症は、ネザートン症候群、表皮水疱症、高IgE症候群、Hailey-Hailey病、遺伝性疾患に伴う重症湿疹などである。

■ 報告された症例のほとんどは、デュピルマブ治療開始後に大きな有害事象を伴わずに有意な臨床的改善を示した。
■ IgE値の低下とサイトカインの正常化も報告されている。

結論

■ 結論として、デュピルマブはネザートン症候群、表皮水疱症、高IgE症候群、Hailey-Hailey病、いくつかの遺伝性疾患に伴う重症湿疹など、Tヘルパー2(Th2)免疫に偏った特定の遺伝性皮膚疾患において治療的役割を果たす可能性があるとされる。

 

 

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