地中海食は、アレルギー疾患に効果があるか?

地中海食は、アレルギー疾患の予防に有効?

■ 日本を含めた先進国を中心に、アレルギー疾患は増えています。
■ アレルギーが増える原因として、遺伝的な要因に加えて、大気汚染や気候変動、そして食生活の変化などが考えられています。

■ そして特に現代の食生活の変化が、アレルギー疾患を増やしているのではという考え方もあります。

■ 最近、地中海食が健康に良いと注目されています。
■ 地中海食とは、オリーブオイルを主な脂肪源として、全粒穀物、野菜、果物、ナッツ、魚介類を多く含む食事のことです。
■ 地中海食が、腸内環境を良くし心臓病などのリスクを減らすなどの効果があるという考え方があります。
■ 地中海食に含まれる抗酸化物質や多価不飽和脂肪酸(特にω3脂肪酸)が、アレルギーにも良い影響を与える可能性があるという報告もあります。

■ そして最近の研究では、地中海食がアレルギーの予防に役立つ可能性が示されています。

Castro-Rodriguez JA, Garcia-Marcos L. What Are the Effects of a Mediterranean Diet on Allergies and Asthma in Children? Frontiers in Pediatrics 2017; 5.

■ 最近、地中海食と食物アレルギーとの関連を検討したシステマティックレビューがありましたので共有します。

Panagiotou E, Andreou E, Nicolaou SA. The Effect of Dietary Components of the Mediterranean Diet on Food Allergies: A Systematic Review. Nutrients 2023; 15:3295.

主に妊娠中や授乳期の母親に対して、オリーブオイル、ポリフェノール、ω3脂肪酸などの地中海食の食事成分を摂取することで、児の食物アレルギーの予防効果があるかを検討した人間を対象とした5研究(無作為化比較試験4件、横断研究1件)と動物を対象とした4研究(実験研究4件)のシステマティックレビューを実施した。

背景

■ アレルギーは、世界中で何百万人もの人々に影響を与える一般的で増加傾向にある健康問題である。
■ この増加は、遺伝的素因、大気汚染、気候変動、運動不足、食生活の変化が原因とされている。
■ 地中海食(Mediterranean Diet; MD)は、果物や野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ、オリーブオイル、魚を多く含み、慢性疾患やアレルギー疾患のリスク低減を含む様々な健康効果と関連している。
■ そこで、MDの食事成分が食物アレルギーに与える影響を調査した。

目的

■ 電子データベースPubMed、Scopus、Science Direct、EBSCOを使用してこのシステマティックレビューを実施した。
■ 最初に特定された696研究のうち、5つの人間における研究と4つの動物における研究が含まれた。
■ バイアスリスクは、Office of Health Assessment and Translation(OHAT)のツールを使用して評価された。

システマティックレビューのための標準的手法であるPRISMA 2020ステートメントに従い、主に食物アレルギーに関連する食品成分(オリーブオイル、ポリフェノール、長鎖オメガ3脂肪酸)の影響を調査した研究を対象として、PubMedなどの文献が検索されました。

全文スクリーニングの対象となった23論文のうち、12件が基準を満たさず、最終的に9件がシステマティックレビューされました。
計9研究のうち5件が人間を対象とした研究(無作為化比較試験4件、横断研究1件)、4件が動物を対象とした研究(実験研究4件)でした。
人間の研究はスウェーデン(2件)、オーストラリア(2件)、中国(1件)で実施され、動物の研究は中国(2件)とスイス(2件)で実施されていました。

結果

■ 人間における研究では、妊娠中や授乳中に介入が行われた場合に有益な効果が観察された。

人間の研究のうち4研究は、PUFAsが食物アレルギーに与える影響を調査しました。Furuhjemらの2009年と2011年の研究では、妊娠中および授乳初月に補給を開始し、有益な効果が認められました。
一方、Palmerら(2012年)、D’Vazら(2012年)の研究では、母親が出産まで、または乳児が6ヶ月まで補給を受けた場合、効果は観察されませんでした。
人間の研究のうち1研究は、アレルゲンをポリフェノールと結合させる効果を調査し、IgE結合能力が低下するという、有益な効果が示されました。

■ 妊娠中から出産まで、または出生後6ヶ月間乳児に介入が行われた場合には、効果は観察されなかった。
■ 動物研究では、MDの食事成分と食物アレルギーに有益な効果が示された。

結論

■ 結果は有望であるが、研究数が限られているため、さらなる研究が必要である。

 

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