母乳中の多価不飽和脂肪酸と、子どものアレルギー疾患発症には関連があるか?

 母乳がアレルギー疾患の発症を促進するのか、抑制するのか、未だ明らかとはいえません。「母乳の多価不飽和脂肪酸」に着目した検討をご紹介します。

■ 母乳に関し、アレルギーの発症を促進するのか、抑制するのか、はたまた関係ないのかは、いまだ論争中です。

■ 最近、母乳中に含まれる物質に注目が集まるようになりました。例えば、母乳中のIL1-β(好中球の機能を補佐するサイトカイン)が多いとアトピー性皮膚炎発症を減らすといった報告があります。

■ それらの母乳中の物質に多価不飽和脂肪酸があげられます。

■ 多価不飽和脂肪酸に関しては、ω-6脂肪酸やω-3脂肪酸が含まれ、以前、妊娠中からの魚油摂取によるランダム化比較試験をご紹介したのは、その視点になります。

■ 今回は、母乳中の多価不飽和脂肪酸と、子どものアレルギー疾患の発症の関連に関するシステマティックレビューです。

 

Waidyatillake NT, et al. Association of Breast Milk Fatty Acids and Allergic Disease Outcomes–a Systematic Review. Allergy 2017.[Epub ahead of print]

母乳育児、脂肪酸、アレルギー疾患で検索して抽出された、計18論文から多価不飽和脂肪酸と子どものアレルギー疾患発症リスクの関連を検討した。

背景

■ 食物に含まれる多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、免疫調節作用がある。

■ 母乳はPUFAが豊富であり、PUFAがアレルギー疾患の発症において重要であるかもしれないという仮説が立てられている。

■ エビデンスが増えているにもかかわらず、母乳中のPUFAとアレルギー疾患との関連性は、これまでシステマティックレビューが実施されていない。

 

方法

PubMedおよびEMBASEにおいて、母乳育児、脂肪酸、アレルギー疾患の用語を用いて検索された。

■ 著者2名が、包括的基準に基づいてレビューのための論文を選択し、研究の特徴および関連の尺度に関する情報を抽出した。

論文から引用。論文選択フローチャート。

 

■ 母乳脂肪酸の濃度とアレルギー疾患の転帰との関連性を報告した研究のみが含まれていた。

 

結果

基準に合致した計18論文から、15の研究集団が抽出された。

■ 多くは、コホート研究(n = 11)であり、症例対照研究2件と横断研究2件が含まれた。

■ サンプルサイズは30〜352人であり、コホート試験の経過観察期間は3〜14年であった。

■ 9件は湿疹を報告し、7件が感作について、5件は喘息/喘鳴について報告した。

■ しかし、母乳中のPUFAとアレルギーの関連を示す点では、研究間に異質性があり、推定値を算出できなかった

■ n-3PUFAとn-6PUFAとアレルギー疾患との関連性を観察した研究は極めて少数であり、この効果の大きさはそれぞれ大きく異なっていた。

 

結論

■ 初乳または母乳中の多価不飽和脂肪酸が小児アレルギー疾患のリスクに影響することを示唆するエビデンスは不十分である。

 

結局、何がわかった?

 ✅初乳または母乳中の多価不飽和脂肪酸と、子どものアレルギー疾患の発症リスクの関連に関するシステマティックレビューを行ったが、メタアナリシスも含め結果はまだ出せなかった。 

 

多価不飽和脂肪酸に関するエビデンスは不十分ですが、魚摂取に関しては、少なくとも悪くはないという結果が多いようです。

■ 残念ながら、結果はまだ出せない、という状況の様です。

■ しかし、多価不飽和脂肪酸に関して、乳児期に魚摂取をしっかりすると、アレルギー疾患の発症リスクを軽減する可能性が指摘されています。

■ 少なくとも、ω3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚(油)を摂取することは悪くはないといえるでしょう。

 

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今日のまとめ!

 ✅母乳中の多価不飽和脂肪酸とアレルギー疾患発症リスクの関係は、まだ結果が出ない状況の様だ。

 

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