耐性マイコプラズマへの対応。

■ 今年は例年以上にマイコプラズマが流行しています。

東京感染症情報センター

■ 一方で、近年マクロライド耐性マイコプラズマが増加し治療が難しくなってきており、ニューキノロン系抗生物質であるトスフロキサシン(商品名オゼックス)の使用が多くなってきています。一方、今シーズンのマイコプラズマに対しては、オゼックスの効果が低下している印象を持ちます(まだそのようなデータは出てはいないようですが)。そこで、8歳以降に対してはテトラサイクリン系の抗生物質であるミノサイクリン(商品名ミノマイシン)を使用する場合が多くなってきました。8歳未満には副作用の懸念から使用はためらわれながら、場合によってはし使用せざるを得ないことがある、という状況です。

■ 耐性マイコプラズマに対しての対策を考えなければならず、文献を検索したところ、ドキシサイクリン(商品名ビブラマイシン)はミノマイシンに比較し副作用が少なく、使用できる可能性があるというレビューを見つけました。

2018/9/4追加。

■ 最近、NS先生のツイートで、米国小児科学会がテトラサイクリン系抗菌薬であるドキシサイクリンの使用を許可するようになったということを知りました。

PECO

* メタアナリシスは実施できておらず、レビューにとどまってるため、PECOは参考程度。

P: PubMed, SciELO (Scientific Electronic Library Online), Research Gate, Google Scholar、Googleを検索して得られた140研究
E: ドキシサイクリン使用
C: ドキシサイクリン不使用
O: ドキシサイクリンの使用と、妊娠中の催奇形性または小児における不可逆性の歯牙着色・骨成長障害に相関はあるか

 

結果

■ 高品質の研究の不足や利用できた報告の時期・最近のエビデンスの不足によっての制限のため、メタアナリシスは実施できていないが、主に歯牙着色を中心に140報告が同定された。

 

妊娠中投与による児のリスク

■ 第一トリメスターのドキシサイクリン使用は、胎児に対するリスクを増加させないことを示唆した報告が複数あった。

 

妊娠中投与による歯牙着色

■ テトラサイクリンによる歯牙着色に関する臨床研究は、1960年代初頭に見受けられ始めた。

■ 特に第二/第三トリメスター時期のテトラサイクリン投与は、歯牙着色に関する主な副作用であり、テトラサイクリン関連の歯牙着色の発生率は3.6%と推定されている。

■ 生後3ヵ月から8歳へのテトラサイクリンの投与は、用量-時間依存的に永久歯の永続的なエナメル質変色を起こしうるという研究があり、8歳以降は歯冠が石灰化されるため、テトラサイクリンによる永続的な歯牙着色は発生しない。

 

妊娠中投与による骨成長阻害

■ テトラサイクリン内服治療は、最大40%の骨成長抑制(特に第2および3トリメスターの早産児)と関連していた。

■ 一方、データは不足しているものの、ドキシサイクリンはカルシウムをキレート化する能力が低く、他の薬より永続的な歯牙着色を生じる可能性は低い。

■ 例えば、ドキシサイクリンを投与をうけた米国インディアンの小児58例がドキシサイクリン以外の投与をうけた213人に比較し永久歯の着色や歯の形成に有意差が認められなかった報告がある。

 

肝障害

■ テトラサイクリンを投与された患者は、年齢-性でマッチされた健常対照者を比較して肝毒性が高くなる(現在の使用者のオッズ比[OR] 3.70(95%信頼区間[CI] 1.19.11.45);使用歴のある患者 OR 2.72 [95%CI 1.26.5.85])が、ドキシサイクリン投与患者のリスクは増加しなかった(現在の使用患者 OR 1.49 [95%CI; 0.61.3.62])。

 

コメント

■ ドキシサイクリンは、マラリア、性感染症(骨盤炎症性疾患、クラミジア、梅毒)、リケッチア疾患、ライム病、皮膚感染、ざ瘡といった感染症を治療するために広く用いられています。

■ 本論文中に記載されていますが、テトラサイクリンが催奇形を含む重篤な副作用、8歳未満への歯牙着色、まれに妊婦での致命的な肝毒性があると報告され、FDAでのPregnancy Category分類はドキシサイクリンもDにされています。

■ 実際、ドキシサイクリンはテトラサイクリンの一種ですが、今回の検討では、ドキシサイクリンが妊娠または幼児期に投与できるとされ、再評価が必要であると結論されていました。

■ なお、2015年6月に、FDAは「妊娠中の薬物使用のためのカテゴリー分類」情報を書き換え、バイオテロに対する妊娠中のドキシサイクリン治療が容認されたそうです。

■ マイコプラズマに対し積極的に第一選択としては推奨はできないですが、8歳未満の児でオゼックスもマクロライドも効果が乏しくテトラサイクリンを考慮せざるを得ない場合は、ミノマイシンではなくビブラマイシンを選択するという方針もあると考えられるでしょう。このような、「選択肢が狭められた状況で選択しなければならない場合」は医療現場でまま発生します。

■ 「単なる咳」に対するマクロライド、場合によってはオゼックスの使用が多すぎたのではないかと思います。

■ この論文を見つけた後、耐性マイコプラズマに対するドキシサイクリンの効果を検討した報告を見つけたので明日提示します。

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