Ebell MH, et al. Does This Patient Have Infectious Mononucleosis?: The Rational Clinical Examination Systematic Review. Jama 2016; 315:1502-9.
伝染性単核球症のメタアナリシス。
■ 伝染性単核球症は、主にEBウイルスの初感染でみられ、小児科医にとっては馴染みのある疾患です。
■ しかし、いわゆる迅速検査はなく、病歴・診察などから鑑別を詰めていく必要があります。
■ とくに溶連菌感染と考えてペニシリンを開始すると皮疹が出現する場合があります(余談ですが、以前は90%以上に皮疹が出るとされていましたが、最近30%程度の皮疹という最近の結果がもあります)。
■ 経験のある小児科医であれば、今回ご紹介する報告は、体感でわかっているような結果かもしれませんが、先日、症状の強いGianotti-Crosti症候群を経験しました。
■ 所見で迷うところでしたが、この論文を読んだあとでしたので少々助けになりました。
E: 臨床所見と検査結果
C: -
O: 伝染性単核球症の診断における、感度、特異度、尤度比。
結果
■ 伝染性単核球症(IM)の可能性は、リンパ節腫大がないと低下し(感度 0.91; 陽性尤度比[LR] 範囲 0.23-0.44)、後頸部リンパ節腫脹があると上昇し(感度 0.87; 陽性LR, 3.1 [95%CI 1.6-5.9])、鼠径部もしくは腋窩リンパ節腫脹があると上昇し(感度 範囲 0.82-0.91; 陽性LR 範囲 3.0-3.1)、口蓋の出血点があると上昇し(感度 0.95; 陽性LR 5.3 [95%CI 2.1-13])、脾腫大があると上昇した(感度 範囲 0.71-0.99; 陽性LR 範囲 1.9-6.6)。
■ 咽頭痛と疲労は、感度は高い(範囲 0.81-0.83)が、非特異的だった。
■ 異型リンパ球増加は、IMの可能性を有意に増加させた(異型リンパ球 ≧10%、LR 11.4 [95%CI, 2.7-35]; 異型リンパ球 ≧20%、LR 26 [95%CI, 9.6-68];異型リンパ球 ≧40%、LR 50[95%CI 38-64])。
■ ≧50%のリンパ球、≧10%の異型リンパ球を両方満たす所見は有用だった(感度 0.99;陽性 LR, 54 [95%CI 8.4-189])。
コメント
■ 伝染性単核球症(IM)は、一般的に5~25歳にみられ、特にに16-20歳の咽頭痛を有している患児の13人に1人に認められるとされていました。
■ 青年期もしくは成人患者で、咽頭痛、後頸部、鼠径部、腋窩リンパ節腫脹、口蓋溢血点、脾腫大、異型リンパ球増加を示すと、IMの可能性が高まるとまとめられます。
■ 小児科医にとっては当たり前の結果でもあるかもしれませんが、異型リンパ球の上昇で尤度比の上がり方がとても大きいことが印象的でした。
■ ノモグラムを使用すれば、事前確率30%くらいかなーというのが、尤度比が10あれば、事後確率が70%を超えるわけですから(ノモグラムは下のサイトを参照ください)。
今日のまとめ
✅青年期もしくは成人における伝染性単核球症は、喉が痛い、首の後ろ・足の付け根・脇のリンパ節が腫れる、口の中の出血点、脾臓が脹れると可能性が高くなる。
✅さらに、血液検査で異形リンパ球という白血球数の割合が高ければ、きわめて可能性が高い。