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 医者になってから初めての学会発表が、O-157による溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome;HUS)でした。

 そして発表後に受けたご質問が、「ホスミシン(抗生剤)を体重1kgあたり何mg投与すればいいんですか?」というものでした。

 それから随分な時間が経過しましたが、投与量以前に、抗生剤を使用すること自体が正しいのかどうかすら、いまだに論争中です。

P: 志賀毒素産生大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli;STEC)に感染し、溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome;HUS)の発症を検討した17報告(1896例)
E: 抗生剤投与あり
C: 抗生剤投与なし
O: 抗生投与投与はHUS発症に影響するか

 

結局、何を知りたい?

✅毒素を作るタイプの大腸菌感染で重篤になった場合に発症する腎障害(溶血性尿毒症症候群)は、抗生剤を使うことで予防するのか、かえって悪くするのかを調査するため、17の研究結果をまとめて検討した。

 

結果

 

 17本の研究の内訳は、レトロスペクティブ研究が8本(47%)、前向きなコホート5本(29%)、ケースコントロール3本(18%)、臨床試験1本であり、検体サイズは11から304例だった。

 1896例のうち、349例(18.4%)がHUSを発症した。

 すべての研究を結合した抗生物質の投与とHUS発症をに関するpooled ORは、1.33(95%信頼区間[CI]0.89-1.99; I2 = 42%)だった。

 バイアスのリスクが低く、HUSを適切な定義を使用している研究のみを検討した再解析では、ORが2.24(95%CI 1.45-3.46; I2 = 0%)だった。

 抗生物質の種類に関しては、ST合剤(5研究:OR 1.95[95%CI 0.63-5.99]);β-ラクタム(2研究:OR 6.10[95%CI 0.62-59.98]);フルオロキノロン(3研究:OR1.83[95%CI 0.70-4.75])だった。


 下痢発症から3日以内に抗生投与を開始した研究では、ORが1.83(95%CI、0.99-3.40; 5研究; I2 = 26%)だった。

 

結局、何がわかった?

✅17研究全体では、抗生剤をつかってもつかわなくても溶血性尿毒症症候群の発生に差はなかった。

✅ただ、きちんとした研究のみで解析すると、抗生剤を使った方が、溶血性尿毒症症候群の発生リスクが2.24倍高かった。

✅下痢が発症してから3日以内に抗生剤を開始した結果を検討しても、溶血性尿毒症症候群の発生リスクが1.83倍高かった。

 

コメント

 

■ STEC感染によるHUSに関し、抗生剤がリスクを増加させる(N Engl J Med 2000; 342:1930–6.)、減少させる(Clin Nephrol 1999; 52:357–62.)という、それぞれの主張があり、先行したシステマティックレビューでは、STEC感染患者への抗生物質投与は、HUSのリスクを増加させないとしていたそうです(JAMA 2002; 288:996–1001.)(Aliment Pharmacol Ther 2006; 24:731–42.)

総合すると、抗生物質の使用は、HUSの発症リスクを増加させなかったが、バイアスリスクが高いと考えられる研究と、HUSの定義が不適切な研究を除外すると、有意にリスクをあげるといえ、STEC感染症に対する抗生物質使用は、推奨されないとまとめられます。

とはいえ、本邦で良く用いられるホスホマイシンに言及がないことや、ランダム化比較試験(現実には困難と思いますが、、)ではないことなどLimitationも大きそうです。

 

今日のまとめ

✅O157のような志賀毒素産生大腸菌(STEC)に対しての抗生物質投与は、少なくとも溶結性尿毒症症候群(O-157で腎不全まで至る特に重篤な病態)を防ぐことはできず、むしろリスクを上げる可能性がある。

 

 

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