Robinson M, et al. Factors associated with epinephrine administration for anaphylaxis in children before arrival to the emergency department. Ann Allergy Asthma Immunol 2017. [Epub ahead of print]
アナフィラキシーに対し、アドレナリン(エピペン)が救急受診前に投与されているとは限りません。
■ アドレナリンは、アナフィラキシーに対する第一選択の薬剤ですが、必要十分に使用されているとは限りません。
■ 救急外来受診前に投与される因子に関して検討した報告を御紹介いたします。
■ 全文フリーで読める論文でしたので、少し詳しめ。
E: EDまたはUCCへ到着する前にアドレナリン投与あり
C: EDまたはUCCへ到着する前にアドレナリン投与なし
O: EDまたはUCCへ到着する前にアナフィラキシー処置が行われたことと関連している因子は何か
結局、何を知りたい?
✅救急受診前にアドレナリン投与を受けた因子を知ろうとしている。
救急受診時にアドレナリン(エピペン)を使用された因子を、後方視的にカルテで確認。
■ 2009~2013年に小児センターのEDまたはUCCにアナフィラキシーのために受診した0~25歳のすべての患者に対し、後方視的な電子カルテ調査で行われた。
■ アドレナリン投与の記録は44例(10.8%)で利用できなかった。
■ 408人のうち、193人(47.3%)は5歳以下だった。
■ 148人(36.3%)が、EDまたはUCCで到着前にアドレナリンを投与されていた。
■ 自宅でのほうが(144人中6人)、学校より(49人中30人)アドレナリン投与が少なかった(オッズ比[OR]0.29; 95%信頼区間[CI]0.15-0.59)。
論文より引用。家庭のほうがアドレナリン投与例がすくない。
■ アドレナリンが自宅で投与された場合、19人(52.8%)は親または保護者により、9人(25%)は救急隊によって使用された。
■ 学校でアドレナリン投与を受けた患者は、10人(33.3%)は学校関係者、8人(26.7%)は親または保護者から、8人(26.7%)は救急隊による投与だった。
■ EDまたはUCCで到着の前にアドレナリンを投与される確率は、1種類の食物アレルギー患者より複数の食物アレルギーを持つ患者でより高かった(OR 3.9; 95%CI 1.7-8.9)。
■ 食物による症状である確率は年齢が高くなるに従って有意に低下した(OR 0.997; 95%CI 0.994-0.999)。
論文より引用。食物による症状では、年齢が高いほうがアドレナリン投与例が少ない。
■ EDまたはUCCへ到着する前のアドレナリン投与を受ける確率は、1臓器症状と比較して、2臓器症状(OR 0.50; 95%CI 0.30-0.85)または3臓器症状(OR 0.41; 95%CI 0.21-0.81)のほうが有意に低かった。
■ 食物(342例[83.8%])が、最も一般的なトリガーだった。
■ 11人(2.7%)のみ、小児ICUに入院し、年長児だった(平均[SD]年齢、12.9[4.4]歳)および大部分が男児だった(n = 8)。
■ EDまたはUCCへ到着前にアドレナリンを投与されなかった群は、有意に帰宅を許可されていなかった(OR 0.56; 95%CI 0.37-0.86; P =.01)。
結局、何がわかった?
✅エピペンは、家庭より学校でのアナフィラキシー時に多く使用されていた。
✅1種類より複数の食物アレルギー児で救急受診前に使用されていた。
✅1臓器より複数臓器のアレルギー症状のほうが、救急受診前にエピペンを使用する確率が低かった。
やや疑問が残る結果ではあるが、アドレナリン投与が遅くなっている場合が多いことを示された。
■ 本研究はアナフィラキシーによる小児の入院前の管理と関連する因子を同定し、アドレナリン投与が遅くなっている場合が多いことを示しています。
■ 複数臓器に症状のある患者に、むしろアドレナリンが投与されていないという矛盾した結果となっており、著者は原因は不明であるとしています。
■ 私も、最初abstractで読み違えたかと思って本文を読んでも、一般的な状況より逆で戸惑いました。
今日のまとめ!
✅アナフィラキシーによる小児の入院前の管理と関連する因子を同定し、アドレナリン投与の多くが遅くなっている場合が多いことが示された。