エピペンの保管温度として、ある程度の高温や低温は許容される?

温暖化がすすむ時代に、アドレナリン自己注射器はどれくらい安定性があるかへの懸念があります。

■ アドレナリンは、アナフィラキシーの際に使われます。
■ たとえば食物アレルギーに対するアナフィラキシー反応時のために、アドレナリン自己注射器(エピペン)を携帯しておく必要があります。

■ しかし、エピペンの添付文書には、室温で保管と記載があります。すなわち、15〜30℃での保管ということです。

■ しかし、近年の温暖化で、特に夏の暑い時期に持ち運んで問題ないかという質問をうけることがあり、悩ましい場面にであうのが現状です。

■ では、極端な温度条件下で、アドレナリンの安定性はどのようになっているのでしょうか。
■ 2016年にシステマティックレビューが報告されています。

Parish HG, Bowser CS, Morton JR, Brown JC. A systematic review of epinephrine degradation with exposure to excessive heat or cold. Annals of Allergy, Asthma & Immunology 2016; 117:79-87.

1:1,000から1:10,000の濃度で密封されたシリンジ、バイアル、アンプル中のaアドレナリン(エピネフリン)について、推奨保存温度以上・以下の温度に曝露されたサンプルを対照サンプルと比較した9件の研究を検討した。

背景

■ エピネフリンは、アナフィラキシーや心臓蘇生の治療における救命薬である。

※エピネフリン=アドレナリンです。

■ 現在米国で推奨されている保管方法は室温管理(20℃~25℃)であり、15℃~30℃での保管が認められている。
■ エピネフリンをこの必要な範囲内に維持することは、特に自動注射器を携帯している患者や緊急車両での保管中には困難である。

目的

■ アナフィラキシーおよび心臓蘇生に使用されるエピネフリン濃度について、極端な温度曝露によるエピネフリンの分解を研究すること。

方法

■ 1:1,000~1:10,000の濃度で密封されたシリンジ、バイアル、アンプル中のエピネフリンについて、対照サンプルと比較して推奨保存温度以上および/または以下の温度に曝露されたサンプル中のエピネフリンを測定したすべての研究を文献検索した。

結果

■ 9件の研究が含まれた。
■ 熱暴露はエピネフリンの分解をもたらしたが、それは長時間暴露した場合のみであった。
■ 恒常的な熱はより多くの分解をもたらした。
■ 極端な寒冷へのエピネフリン暴露を評価した研究では、いずれも有意な分解は認められなかった。
■ 実際の温度変化の影響を評価した研究では、いずれも有意な分解を認めなかった。
■ 自動注射器を対象としたのは、2つの小規模な研究(1つは熱、1つは凍結を評価)のみであったが、試験された40のデバイスはすべて正常に作動した。

結論

■ 実環境における温度変動は、これまで示唆されていたよりも有害性が低い可能性がある。
■ 凍結および限定された熱負荷はエピネフリンの分解をもたらさなかった。
■ エピネフリンの冷蔵は分解を低減させるようである。
■ しかしながら、極端な温度、特に凍結が自己注射器に及ぼす影響については十分に確立されていない。
■ 制限された熱暴露による臨床的に妥当な温度で、自己注射器を用いたさらなる研究が必要である。

 

 

※論文の背景や論文の内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。

※登録無料のニュースレター(メールマガジン)も始めています。5000人以上の登録ありがとうございます。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう