小児のアトピー性皮膚炎は、保湿剤を定期的に使うと悪化が少なくなる

小児アトピー性皮膚炎治療における保湿剤のエビデンスは貴重です。フランスからのランダム化比較試験。

■ アトピー性皮膚炎に対して保湿剤が有効であり、第一線級の治療であることは、各国のガイドラインからも明らかでしょう。最近、システマティックレビューもご紹介しました。

■ また、小児アトピー性皮膚炎に対し、ステロイド外用薬を使用後、保湿剤を使用すると再燃までの期間を有意に延長するという結果も、最近報告されました。

■ 以前ご紹介した報告は中国からで、同じような結果が今度はフランスから報告されました。

 

Tiplica GS, et al. The regular use of an emollient improves symptoms of atopic dermatitis in children: a randomized controlled study. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology : JEADV 2018.[Epub ahead of print]

軽症から中等症の小児アトピー性皮膚炎335人に対し、ステロイド外用を使用して紅斑を改善後、2種類の保湿剤塗布群と保湿剤なし群にランダム化し、12週間観察した。

背景

■ 皮膚保湿剤は、アトピー性皮膚炎(AD)の治療の第一線の治療である。しかし、保湿剤を定期的に塗布することがAD重症度を低下させるエビデンスは不十分である。

 

目的

■ 保湿剤を定期的に使用することにより、AD小児の重症度が低下するかどうかを評価する。

 

方法

軽症から中等症のアトピー性皮膚炎(AD)のある小児が、紅斑を発症している間にリクルートされ、多施設無作為化並行群オープンラベル試験が実施された。

■ ステロイド外用薬による紅斑改善後、患者を皮膚保湿剤V0034CR、対照保湿剤、保湿剤なし(1:1:1)にランダム化し、12週間介入した。

管理人注
保湿剤と対照保湿剤は、それぞれV0034CR (Dexeryl®; Pierre Fabre Médicament, Toulouse, France)と、Atopiclair®, Sinclair Pharma, London, United Kingdom)でした。Dexerylというのはフランスの保湿剤のようで、グリセロールと流動パラフィンが含有されていると、本文に記載がありました。
1日2回、1回8g塗布したそうです。

■ AD重症度は、医師(SCORADとサブコンポーネント、IGA)および両親(PO-SCORAD/POEM)によって定期的に評価された。

 

結果

■ 335例の患者を、V0034CR(n = 111)、対照皮膚保湿剤(n = 116)、保湿剤なし(n = 108)にランダム化した。

■ 12週間の治療後、SCORADは、V0034CR群で5.28ポイント、対照保湿剤群で3.36ポイント低下した(+4ポイント;両方の保湿剤群でp <0.001)。

■ 同様の方法により、PO-SCORADは、V0034CR群と対照保湿剤群でそれぞれ4.88および2.67ポイント低下したが、保湿剤なし群では2.90ポイント増加した(p <0.001)。

■ POEMについても同様の結果が観察された。

■ 12週間の治療期間にわたり、全スコアが連続的に低下した。

■ 試験終了時に、完全寛解患者(すなわち、治療期間中に新規に紅斑を発症しなかった)の率は、保湿剤なし群(29.8%)よりV0034CR群(59.5%)および対照保湿剤群(44.3%)で高かった(p <0.001)

 

結論

■ これらの結果は、軽症から中等症のAD小児における皮膚保湿剤を定期的に使用することにより重症度が低下することを示しており、これらの患者の第一線の治療としての保湿剤の使用を支持することを実証している。

 

結局、何がわかった?

 ✅小児アトピー性皮膚炎に対し、ステロイド外用を使用後に保湿剤2種類を定期塗布もしくは保湿剤なし群にランダム化して12週間観察すると、PO-SCORAD(患者側が評価するアトピー性皮膚炎の重症度スコア)は、V0034CR群と対照保湿剤群でそれぞれ4.88および2.67ポイント低下(改善)したが、保湿剤なし群では2.90ポイント増加(悪化)した(p <0.001)。

 ✅12週間の介入後、治療期間中に新規に紅斑を発症しなかった率は、保湿剤なし群(29.8%)よりも、V0034CR群(59.5%)および対照保湿剤群(44.3%)で高かった(p <0.001)

 

 

保湿剤ごとの有効性の差が気にかかるものの、保湿剤がアトピー性皮膚炎に有効であることを示す貴重な報告。

■ 2種類の保湿剤が使用されていますが、それらの効果を比較するための統計的解析は計画されていなかった、と本文に記載がありました。でも、ちょっとこの差を考察していただきたかったです。

■ ただ、少なくとも、保湿剤が小児のアトピー性皮膚炎に有効であることは証明されたといえそうです。平均約4歳でしたので、1日2回、1回8gというとかなりしっかりした量になります。これくらいは必要、ということでしょう

 

今日のまとめ!

 ✅軽症~中等症の小児アトピー性皮膚炎に対し、ステロイド外用を使用し紅斑を改善後に保湿剤を定期使用すると、皮膚炎スコアが改善し、紅斑の再燃が有意に少なくなる。

 

Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう