la Tour AT, et al. Natural History of Benign Nonimmediate Allergy to Beta-Lactams in Children: A Prospective Study in Retreated Patients After a Positive and a Negative Provocation Test. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2017.[Epub ahead of print]
抗生剤のアレルギーの診断がついた後、回避を続けるのが正しいか?
■ まず、ペニシリン(抗生剤)に対するアレルギーが疑われても、負荷試験を行うと9割以上は陰性であるという結果があります。
■ では、負荷試験で陽性であった場合はどうでしょう?回避を続けるのがただしいのでしょうか?
βラクタム系抗生剤に対しアレルギーを疑われ、2日間の負荷試験を行って陽性であった児に対し、3年後に負荷試験を実施した。
背景
■ 薬物誘発試験(drug provocation test;DPT)は、薬物アレルギーを診断するためのゴールドスタンダードと考えられており、小児における非即時βラクタム(beta-lactam ;BL)アレルギーの診断において特に重要である。
■ しかし、BLアレルギーの自然歴はよくわかっていない。
目的
■ この検討の主な目的は、非即時型BL過敏症および耐性獲得の長期自然経過を評価することであり、2次的な目的は、2日間のプロトコールによるDPTの陰性予測値(negative predictive value;NPV)を決定することだった。
方法
■ 2006年~2011年までジュネーブ大学病院の救急部で、βラクタム剤(BL)による治療中に重症でない発疹を発症し、2日間のプロトコールに基づく初回診断誘発試験(initial diagnostic drug provocation test [dDPT])を実施し陽性判定を受けた児がリクルートされた。
■ idDPTが陽性の場合、3年後にフォローアップのための薬物誘発試験(fuDPT)を受けた。
■ idDPT陰性の場合、被疑BL薬とのその後の耐性を評価するためにアンケートを送った。
結果
■ 初回診断誘発試験(idDPT)が陽性であった18人のうち、16人(89%)がフォローアップのための薬物誘発試験(fuDPT)陰性であり、2人が重症でない発疹を呈した。
■ その16人のうち11人は、被疑薬のBLを用いたその後の治療に反応なく耐性を示し、抗生物質に対する自然耐性獲得が示された。
■ 別の観点から、2日間のプロトコルによるDPTのNPVが96.7%で優れていることを見出した。
結論
■ 我々のデータは、fuDPTが、重症でない非即時BLアレルギー児の耐性獲得を評価するために安全かつ有用であることを示唆している。
■ さらに、この結果は短期間のDPTプロトコル(2日間)を支持し、その結果、96.7%という高いNPVであり、リスクバランスに有利であることを示した。
結局、何がわかった?
✅ βラクタム系抗生剤に対するアレルギーが疑われ、診断誘発試験(idDPT)が陽性であった18人に対し、3年後に負荷試験を実施すると16人(89%)が負荷試験陰性だった。
薬物アレルギー診療は簡単ではないが、軽症の薬物アレルギーに対する負荷試験は有用であり陰性化も期待できるようだ。
■ よく、「抗生剤にアレルギーの疑いがある」という話を受けて、ずっと使用できなくなっている方がいらっしゃいますが、まずは診断が必要になるといえましょう。
■ さらに陽性だったとしても、軽症であれば陰性化が期待できるといえましょう。
■ 以前、NSAIDs(解熱鎮痛薬)に対するアレルギーも、改善する可能性があります。
■ もちろん、即時型の重症薬物アレルギーに対しては負荷試験はリスクが高いですので、十分な配慮を要する(負荷試験も避ける必要もある)ことは言うまでもありません。
今日のまとめ!
✅βラクタム系抗生剤に対する軽症のアレルギーは、自然に改善する可能性がある。