Byars SG, et al. Association of Long-Term Risk of Respiratory, Allergic, and Infectious Diseases With Removal of Adenoids and Tonsils in Childhood. JAMA Otolaryngology 2018.[Epub ahead of print]
扁桃腺・アデノイド切除は、その後の感染リスクになるか?
■ 咽頭炎・扁桃炎に頻回にかかってしまう場合に、扁桃腺やアデノイドを切除することはよく行われる診療です。
■ 若い頃、扁桃摘出が感染リスクをあげるかもしれないと上級医にいわれていましたが、最近はそのリスクは少ないという考えに変わってきていました。
■ そのテーマに基づいた研究結果が、最近のJAMAの姉妹紙に報告されていましたのでご紹介いたします。
1189061人の小児において、9歳までの扁桃・アデノイド切除が、その後の健康へのリスクに影響するかを調査した。
重要性
■ 閉塞性呼吸または中耳炎の再発を治療に対するアデノイドおよび扁桃腺の外科的摘除は、一般的な小児に対する処置である。
■ しかし、これらのリンパ器官が免疫系の発達や機能に重要な役割を果たすという事実にもかかわらず、長期的な健康影響についてはほとんど知られていない。
目的
■ 小児期におけるアデノイド切除術、扁桃摘出術、アデノイド口蓋扁桃摘出術に伴う長期のリスクを評価する。
試験デザイン、セッティング、参加者
■ 1979年~1999年にデンマークで出生した小児1189061人を対象とし、2009年までの少なくとも10歳~30歳までをカバーした国内登録簿を使用した人口ベースのコホート研究を実施した。
■ 症例群および対照群は、手術前にその健康状態が大きく異なることがないように選択された。
曝露
■ アデノイドまたは扁桃腺が9歳までに切除された場合、参加者は曝露されたとされた。
主なアウトカムと計測
■ 30歳までの疾患(ICD-8とICD-10という国際疾病分類で定義)を、18の共変量(妊娠合併症、出生時体重、Apgarスコア、性別、社会経済的因子、デンマークで出生した地域)で調整した層別コックス比例ハザード回帰を用いて調査した。
結果
■ 計1189061人の小児がこの研究に参加した(女性48%)。
■ 17460例はアデノイド切除術、11830例は扁桃切除術、31377例はアデノイド口蓋扁桃摘出術を施行し、対照群は1157684例だった。
■ アデノイド切除と扁桃摘出は、上気道の罹患リスクを2~3倍に増加させた(相対危険度[RR]1.99; 95%CI 1.51~2.63とRR 2.72 ; 95%CI 1.54~4.80)。
■ より小さいものの、感染性およびアレルギー性疾患のリスク増加は、観察された。
■ アデノイド口蓋扁桃摘出は、感染症のリスクが17%増加したことと関連しており(RR 1.17,95%CI 1.10~1.25)、小児おいて比較的一般的である(12%)でもあるため、絶対リスクが2.14%増加した。
■ 対照的に、これらの外科手術が治療することをしばしば目的としている状態に対する長期的なリスクは、それほど大きくはなく、時にはより低く、そしてより高い場合もあった。
結論と妥当性
■ アデノイド切除術17460例、扁桃切除術11830例、アデノイド口蓋扁桃摘出術31377例を施行した小児を含むおよそ120万人を対象とした検討で、呼吸器感染症、アレルギー性疾患の長期的なリスク上昇が手術と関連していることを示した。
■ 交絡因子に対する厳格な対照が用いられたデータが利用可能であったが、これらの交絡因子の影響を完全には説明できない可能性がある。
■ 我々の結果は、扁桃摘出術またはアデノイド切除術を行う際に、長期的なリスクを考慮することが重要であることを示唆している。
結局、何がわかった?
✅アデノイド切除と扁桃摘出は、上気道の罹患リスクを2~3倍に増加させた(相対危険度[RR]1.99; 95%CI 1.51~2.63とRR 2.72 ; 95%CI 1.54~4.80)。
アデノイド・扁桃切除は感染リスクを長期的にはあげるかもしれない。
■ アデノイド・扁桃切除は、その後の感染リスクをあげるかもしれないとう結果でした。
■ 一方で、短期的な咽頭炎リスクは減らす、というシステマティックレビューもあります。
■ 今回の結果は、アデノイド・扁桃を切除してはいけないという結果ではありません。切除による短期的な効果と長期的なリスクを考えながら、切除を選択するかどうかを決定するための情報と言えるでしょう。
今日のまとめ!
✅アデノイド・扁桃切除は、長期的には感染リスクになる可能性がある。