乳児アトピー性皮膚炎に対する保湿剤併用は、ステロイド外用薬量を減量させる

アトピー性皮膚炎の患者さんの多くが、ステロイド外用薬を減らしたいと考えているでしょう。

■ ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎の炎症を減らしていくために重要な役割を果たしています。

■ 以前、皮膚の炎症は、IL-4/IL-13というサイトカインを通し、さらに皮膚バリアを低下させてアトピー性皮膚炎を悪化させていくことはすでに報告されていることをご紹介しました。さらに申し上げるならば、皮膚が大きく悪化して重症化すると、ステロイド外用薬の使用の有無にかかわらず副腎抑制が来ることもまた、以前ご紹介いたしました。

■ さらに、アトピー性皮膚炎の重症度が高いまま続くと、皮膚の感染症ばかりか自閉症スペクトラム障害や心血管のリスクにすらなる可能性すら、最近は指摘されるようになっています。

■ すなわち、皮膚の炎症を残したままでは、皮膚のバリア機能を更に下げ、全身的な問題すら起こしうるということです。

■ しかし、ステロイド外用薬を連用することを勧めているわけではありません。丁寧なスキンケアを併用することで、ステロイド外用薬を減らすことができます。そのエビデンスをご紹介いたします。

 

Grimalt R, et al. The steroid-sparing effect of an emollient therapy in infants with atopic dermatitis: a randomized controlled study. Dermatology 2007; 214:61-7.

中等症以上のアトピー性皮膚炎に罹患した生後12ヶ月未満の乳児173人は、ステロイド外用薬の治療後、皮膚保湿剤使用群もしくは非使用群(対照群)にランダム化された。

背景

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の治療における皮膚保湿剤のステロイドを減量する効果を明確に示した研究はない。

 

目的

中等症から重症のADがある乳児に使用されるステロイド外用薬の量に対するオート麦エキスを含有した皮膚保湿剤の有効性を評価する。

 

研究デザイン

中力価/高力価のステロイド外用薬により、炎症性病変に対する治療を受けた生後12ヶ月未満の乳児173人は、皮膚保湿剤使用群もしくは非使用群(対照群)の6週間の治療にランダム化された。

 

方法

■ 0日、21日、42日における、チューブの重量測定による副腎皮質ステロイド薬の使用量の評価、Scoring Atopic Dermatitis Index(SCORAD)による疾患重症度、Infant's Dermatitis Quality of Life Index とDermatitis Family Impact scoreによる乳児と両親の生活の質が評価された。

 

結果

6週間に使用された中力価/高力価のステロイド外用薬の使用量は、対照群は.5%(有意差なし)と比較した皮膚保湿剤群は42%(p <0.05)減少した。

■ SCORAD指標、乳児/両親の生活の質は両群で有意に改善された(p <0.0001)。

 

結論

■ 皮膚保湿剤による治療は、乳児ADにおける高力価のステロイド外用薬の使用量を有意に減少させる。

 

結局、何がわかった?

 ✅  生後12ヶ月以内の中等症以上のアトピー性皮膚炎に対し、ステロイド外用薬を使用後に保湿剤を併用した群はステロイドの使用量が42%減少した(p <0.05)が、保湿剤を使用しなかった群はステロイド外用薬の使用量は減量できなかった。

 

ステロイド外用薬を減らしていくために、スキンケアの併用がとても重要といえるでしょう。

■ 私は、患者さんの多くは「ステロイド外用薬を減らしたい」と考えておられると思っています。

■ そして、「私も」、ステロイド外用薬を減らしたいと思っています。

ステロイド外用薬は副作用がないわけではなく、アトピー性皮膚炎に使用していくためには、必ず「減らす、止める」を考えていくことを念頭においているからです。

■ そのために、「丁寧なスキンケア」がどうしても重要と思っています。今回ご紹介したエビデンスは、そのスキンケアの重要性を示した報告ととらえています。

 

今日のまとめ!

 ✅ 乳児期のアトピー性皮膚炎治療において、保湿剤の使用はステロイド外用薬の使用量を有意にへらす。

 

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