以下、論文紹介と解説です。

Fong WCG, et al. Childhood food allergy and food allergen sensitisation are associated with adult airways disease: A birth cohort study. Pediatric Allergy and Immunology 2021; 32:1764-72.

ワイト島出生コホートに参加した1456人を1~26歳における食物アレルギー・感作の状態をフォローし、小児期の食物アレルギー・感作と、18歳・26歳のアレルギー性気道疾患との関係を調査した。

背景

■ 小児期の食物アレルギー(food allergy; FA)や食物アレルゲン感作(food allergen sensitization; FAS)は、小児期のアレルギー性気道疾患(AAD;asthma and rhinitis;喘息および鼻炎)と関連している。

■ しかし、小児期のFA/FASと成人期のAADとの関連については、十分に解明されていない。

 

方法

■ ワイト島出生コホートを対象に、一般的な食物アレルゲンに対する小児期のFA/FASと、18歳・26歳のAADとの縦断的な関係を調査した。

■ 対象者(N=1456)は、1~26歳の一定期間ごとに、FA/FASの状態をフォローアップした。

■ AADは4年目以降に評価した。

■ FA/FASとAADの関連性は、単変量解析と多変量ロジスティック回帰で評価し、臨床的に重要な共変量を調整した。

 

結果

4歳時の食物アレルギーは、18歳時(調整オッズ比[aOR] 2.75; 95%CI 1.53-4.92; p=0.001)や26歳時(aOR 2.62; 95%CI 1.32-5.20; p=0.006)の喘息と有意に関連していた。

■ 逆に、小児期のFAは成人期の鼻炎とは関連していなかった。

■ 4歳と10歳のFASは両方のAADと関連していたが、FASと鼻炎の関連は喘息に比べてあまり強固ではなかった。

 

結論

■ 小児期のFASは、成人期の喘息の発症率を約3倍に増加させた。

■ さらに、小児期のFASも成人期の喘息のオッズ増加と関連していた。

■ 逆に、小児期のFAではなくFASが、成人期の鼻炎と関連していた。

■ これらから、FA/FASを持つ児は、その後のAAD、特に喘息の早期発見と介入を促進するために、フォローアップされるべきであると提案する。

『感作そのものがその後のアレルギー疾患のリスクになる』という文脈の報告の一つと思われる。

■ コホート試験デザインなので、因果を十分に説明しているわけではありませんが、『感作そのものが、その後の感作を進める可能性』が指摘されるようになり、皮膚からの経皮感作だけでなく感作そのものもその後のリスクになることが注目されるようになっています(経皮感作を否定されているわけではない)。

■ その文脈での報告と言えるでしょう。

■ ただし、小児期の食物アレルギーを改善させることで、成人期の気道アレルギーを予防できるか…に関しては、今後の検討を要するかと思います。

 

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