以下、論文紹介と解説です。

Yamamoto-Hanada K, Borres MP, Åberg MK, Yang L, Fukuie T, Narita M, et al. IgE responses to multiple allergen components among school-aged children in a general population birth cohort in Tokyo. World Allergy Organization Journal 2020; 13:100105.

東京で出生した5歳児984名を2008年から2010年に、9歳児729名を2012年から2014年に登録し、感作の進展を調査した。

背景

■ 日本人の小児におけるアレルゲンコンポーネントに対する反応パターンは、これまで十分研究されていない。

 

目的

■ 日本人小児の出生コホートにおいて、5歳および9歳における感作パターンの違いを調べ、感作の程度やパターンの経時的変化を明らかにすることを目的とした。

 

方法

■ 2008年から2010年にかけて5歳児984名、2012年から2014年にかけて9歳児729名を登録した。

■ アレルギー疾患は、ISAACとUK Working Partyの診断基準を用いて評価した。

■ アレルゲンコンポーネントに対する血清特異的IgE抗体価は、5歳と9歳のときにマルチプレックスアレイImmunoCAP ISACで測定した。

■ 主成分分析(Principal component analysis; PCA)は、アレルゲンコンポーネントに対するIgE感作の特徴を明らかにするために行われた。

 

結果

■ アレルギー性鼻炎の有病率は時間経過とともに大幅に増加した(10.6%-31.2%)。

■ さらに、アレルゲン特異的IgE抗体価(sIgE)感作率も5歳時の57.8%から9歳時の74.8%へと上昇した。

■ Der f 1(ダニ)に対するIgE感作率は5歳時42.1%、9歳時54.3%だった。

■ さらに、Cry j 1(スギ)に対する感作率が高かった(5歳時32.8%,9歳時57.8%)。

論文より引用。5歳と9歳のさまざまなアレルゲンに対する感作率。

Fig. 3

■ 主成分分析により、PR-10交差反応コンポーネントに対する感作はダニ感作とは無関係であり、ダニ感作の前に花粉感作を獲得した小児はいなかった。

論文より引用。651人の感作の進展。
黒いマーカーは初期値、水色と青色のマーカーはそれぞれ5歳と9歳における個々の被験者の感作をグラデーションで結んだもの。
感作の進展には傾向があり、最初は主にダニに、その後はPR10や樹木花粉に感作が見られる。

Fig. 7

 

結論

■ 日本人小児におけるアレルギー性鼻炎や関連アレルゲンコンポーネントの有病率は、5歳から9歳にかけて増加した。

東京に限定されるものの、感作率の参考になる報告。

■ このデータの中で、個人的に知りたかったのはペットアレルゲンの感作率でした。

■ 9歳に関する数字は論文中にあったのですが、5歳時点での正確な数字は読み取れず…でも5歳から9歳に大きく進み、イヌよりネコのほうが感作率が高いということがわかりました。

 

 

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