デルゴシチニブクリームの濃度によって、手湿疹への治療有効性が異なるか?

手湿疹の治療は簡単ではない。

■ 手湿疹はきわめて多い症状のひとつで、生涯有病率は最大 20% 、成人の 1 年間の有病率は約 10% とされています(Quaade AS, Simonsen AB, Halling AS, Thyssen JP, Johansen JD. Prevalence, incidence, and severity of hand eczema in the general population - A systematic review and meta-analysis. Contact Dermatitis 2021; 84:361-74).。

■ そして最近、デルゴシチニブ軟膏の濃度をさまざま変化させて、手湿疹に有効かを比較した報告がなされました。

 

Worm M, Thyssen JP, Schliemann S, Bauer A, Shi VY, Ehst B, et al. The pan‐JAK inhibitor delgocitinib in a cream formulation demonstrates dose response in chronic hand eczema in a 16‐week randomized phase IIb trial*. British Journal of Dermatology 2022; 187:42-51.

ステロイド外用薬が十分効果のない手湿疹の成人 258人を、デルゴシチニブクリーム1、3、8、20 mg/g (=0.1%、0.3%、0.8%、2%)1日2回16週間にランダム化して、効果と安全性を比較した。

背景

■ 慢性手湿疹(Chronic hand eczema; CHE)は負担の大きい疾患であり、十分に立証された安全かつ有効な新しい治療法が必要とされている。

■ 最近のCHE第IIa相試験において、汎ヤヌスキナーゼ(Janus kinase; JAK)阻害剤であるデルゴシチニブ軟膏製剤が有効であり、良好な忍容性を示すことが明らかになった。

 

目的

■ 本試験では、CHEにおけるデルゴシチニブクリームの用量反応性、有効性、安全性を評価した。

 

方法

■ この二重盲検第IIb相用量設定試験では、直近でステロイド外用薬の効果が不十分または禁忌であるCHEの成人を、デルゴシチニブクリーム1、3、8、20 mg/gを1日2回16週間にわたってにランダム化した。

■ 主要評価項目は、Investigator's Global Assessment for CHE(IGA-CHE)の治療成功度[0(clear)または1(almost clear)でベースラインから16週目まで2点以上の改善]とした。

■ 副次的評価項目は、IGA-CHE治療成功までの期間と手湿疹重症度指数(Hand Eczema Severity Index; HECSI)の変化、その他の評価項目は、そう痒と痛みの数値評価尺度(numerical rating scale; NRS)スコアと16週目の患者グローバル評価(Patient’s Global Assessment; PaGA)だった。

 

結果

■ 患者(n = 258)は、デルゴシチニブクリーム1、3、8、20 mg g-1または基剤に1 : 1 : 1 : 1 : 1にランダム化された。

■ IGA-CHEで有意な用量反応関係が確立された(P < 0.025)。

■ 16週目におけるIGA-CHEの治療成功率は、21.2%(1mg/g)、7.8%(3mg/g)、36.5%(8mg/g)、37.7%(20mg/g)、8.0%(基剤)だった。

■ デルゴシチニブクリーム 8 mg/gおよび20 mg/gは、基剤に対して治療効果を示した(P < 0.001)。

■ 同様に、HECSI、そう痒と痛みのNRSスコア、PaGAの改善がみられた。

■ デルゴシチニブクリームの忍容性は良好で、有害事象の大部分は軽症もしくは中等症であり、治療とは無関係であると考えられた。

■ 最も多く報告された有害事象は、鼻咽頭炎(デルゴシチニブ群17.3~29.4% vs 基剤群40%)、湿疹(デルゴシチニブ群5.8~11.3% vs 基剤群16.0%)、頭痛(デルゴシチニブ群3.8~11.5% vs 基剤群4.0%)だった。

 

結論

■ 本試験において、デルゴシチニブクリームは有効性において用量反応関係を示し、良好な忍容性を示した。

 

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