ステロイド外用薬によりアトピー性皮膚炎の治療を早期に行うと、卵アレルギー発症を低下させる(PACI試験)

早期のアトピー性皮膚炎の治療により、卵アレルギーの発症を予防できるか?

■ 皮膚の炎症から感作、アレルギー体質が拡大していくという『経皮感作』がひろく知られるようになり、アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの発症リスクとなりうることが広く知られるようになりました。

■ 一方で、アトピー性皮膚炎発症早期から『プロアクティブ療法』をおこなうと、食物アレルギーの発症リスクを下げられるかもしれないということが、後ろ向きコホート試験でしめされていましたが、前向きランダム化比較試験がありませんでした。

■ そしてこのテーマで大規模ランダム化比較試験として実施されていた『PACI試験』の結果が、JACIに報告されましたので共有します。

 

Yamamoto-Hanada K, Kobayashi T, Mikami M, Williams HC, Saito H, Saito-Abe M, et al. Enhanced early skin treatment for atopic dermatitis in infants reduces food allergy. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2023.

7-13週齢のアトピー性皮膚炎の乳児650人登録された乳児のうち、640人 (プロアクティブ療法群318人、従来治療群322人に関し、28週齢での鶏卵アレルギーの発症率を検討した。

背景

■ 早期発症のアトピー性皮膚炎は食物アレルギーの強い危険因子であり、早期に効果的な治療を行うことで経皮感作を予防できる可能性が示唆された。

目的

■ アトピー性皮膚炎の臨床的に湿疹のある皮膚と湿疹のない皮膚へのプロアクティブ療法が、臨床的に湿疹のある皮膚のみへのリアクティブ療法よりも鶏卵アレルギーの予防に有効であるかどうかを検証した。

方法

■ 多施設共同並行群間非盲検評価者盲検ランダム化比較試験(PACI Study - Prevention of Allergy via Cutaneous Intervention Study)を実施した。
■ 7~13週齢のアトピー性皮膚炎の乳児を登録し、早期プロアクティブ療法とステロイド外用薬(TCS)を用いた従来のリアクティブ療法に1:1の割合でランダムに割り付けた。
■ 主要アウトカムは、生後28週目に経口食物経口負荷試験で確認された即時型鶏卵アレルギーの割合とした。

結果

■ 650人の乳児を登録し、640人の乳児(プロアクティブ療法[n=318]または従来治療[n=322])を分析した。

■ プロアクティブ療法は、従来治療と比較して鶏卵アレルギーを有意に減少させ(31.4% vs. 41.9%, P=0.0028; リスク差 -10.5%, 片側信頼区間 [CI] の上限 -3.0%)、28週の体重(平均差 -422 g, 95%CI -553 g ~ -292 g)や身長(平均差 -0.8cm, 95%CI -1.22 cm ~ -0.33 cm)を減少させた。

結論

■ 鶏卵アレルギー予防戦略の構成要素として、十分にコントロールされたアトピー性皮膚炎管理の可能性を強調した。
■ この試験の強化された治療プロトコルは、TCSの副作用を避けるために、日常診療に基づく鶏卵アレルギーの予防アプローチとして考慮する前に修正されるべきである。
■ TCSによる寛解導入後、TCSの安全性の懸念を克服するために、より低い力価のTCSまたは他の外用療法による維持療法が、代替のプロアクティブ治療として考慮されるかもしれない。

 

 

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