ステロイド外用薬だけでなく、デルゴシチニブ軟膏でも『プロアクティブ療法』は可能?

プロアクティブ療法は、2000年頃から普及してきた、抗炎症薬を間欠的に使用して悪化を防ぐ、アトピー性皮膚炎の治療法。

■プロアクティブ療法とは、再燃しやすいアトピー性皮膚炎に対し『悪化する前に』『間欠的に』抗炎症薬を使用するという治療法です。

■ プロアクティブ療法に使用される抗炎症薬は、おもにステロイド外用薬が活用されています。

■ では、新規外用薬によるプロアクティブ療法は有効なのでしょうか?

■ 最近、後ろ向き研究ですが、ステロイド外用薬と外用JAK阻害薬であるデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏を、プロアクティブ療法として使用し、皮膚の状態や皮膚角層水分量や紅斑指数などの主観的・客観的な指標を用いて比較するという研究結果が報告されています。

 

Suehiro M, Numata T, Murakami E, et al. Real-world efficacy of proactive maintenance treatment with delgocitinib ointment twice weekly in adult patients with atopic dermatitis. Dermatologic therapy. 2022;35(7):e15526.

ステロイド外用薬もしくはデルゴシチニブ軟膏を用いてプロアクティブ療法(週2回で寛解維持)をしている20歳以上の日本人患者25人を後ろ向きに確認した。

背景

■ これまでの研究により、ヤヌスキナーゼ阻害剤であるデルゴチニブ(DEL)軟膏のアトピー性皮膚炎(AD)への有効性が明らかとなっている。
■ しかしながら、デルゴチニブ軟膏の寛解維持への有効性についてはまだ解明されていない。

方法

■ そこで、デルゴチニブ軟膏または局所用ステロイド(TCS)を週2回、上肢の病変部に適用する寛解維持療法を実施したAD患者の医療記録からデータを収集した。
■ 有効性は、痒みの数値評価尺度(NRS)スコア、角層の水分量(SCH)、紅斑指数(EI)の変動を基に評価した。

結果

■ 25名の患者の中で、TCSを用いた場合、4名(16%)に湿疹の再発が見られた一方、デルゴチニブを用いた場合は8名(32%)であった。

■ 各指標の変動に関しては、TCSを使用した部位とデルゴチニブを使用した部位との間で有意な差は認められなかった。
■ NRSとEIの平均変化量は、TCSを用いた部位では僅かに改善が見られたが、デルゴチニブを用いた部位では僅かに悪化が見られた。
■ しかしながら、デルゴチニブ群の角層の水分量(SCH)は保たれ、TCS群のSCHは低下した。

結論

■ 寛解維持療法においては、TCSのほうがデルゴチニブよりも有効である可能性が高いとされる。
■ しかしながら、乾燥肌を伴うAD患者に対する維持療法においては、デルゴチニブ軟膏はステロイド軟膏と同等の効果が見込まれると考えられる。

 

 

管理人の感想は、noteメンバーシップでまとめました。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう