アトピー性皮膚炎に対し、さまざまなメカニズムの薬剤が開発されている。
■ アトピー性皮膚炎の治療に関して、2018年のデュピルマブ(商品名デュピクセント)の登場から、急速な進化をしはじめました。
■ 小児に関しても、2021年からのデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏を皮切りに、さまざまな薬剤が使えるようになってきています。
■ しかし、実用化に向かっている薬剤はこれらだけではありません。
■ たとえば、抗OX40抗体という、また耳慣れない生物学的製剤がアトピー性皮膚炎に有効であることが示されています。
■ 今月は、自分自身のUPDATEも必要性もあり、そのような薬剤の解説が多くなる予定です。
■ 最近、Lancetに報告された研究結果を共有します。
Guttman-Yassky E, Simpson EL, Reich K, Kabashima K, Igawa K, Suzuki T, et al. An anti-OX40 antibody to treat moderate-to-severe atopic dermatitis: A multicentre, double-blind, placebo-controlled phase 2b study. Lancet 2023; 401:204-14.
アトピー性皮膚炎患者274例を、4週ごとにロカチンリマブ(150mgまたは600mg)を皮下投与する群、2週ごとにロカチンリマブ(300mgまたは600mg)を皮下投与する群、プラセボを皮下投与する群にランダム化し(1:1:1:1:1)、有効性を確認した。
背景
■ OX40はT細胞の分化とメモリー誘導に重要な役割を果たす。
■ 抗OX40抗体であるロカチンリマブはOX40経路を阻害する。
■ そこで、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を持つ成人患者に対して、ロカチンリマブの有効性と安全性を評価した。
方法
■ この多施設共同二重盲検プラセボ対照の第2b相試験は、米国、カナダ、日本、ドイツの65の二次および三次施設で行われた。
■ 対象は、EASI(Eczema Area and Severity Index)16点以上で定義される中等度から重度の疾患活動性を持つアトピー性皮膚炎(American Academy of Dermatology Consensus Criteriaまたは地域の診断基準に基づく)が確認された成人患者(18歳以上)だった。
■ これらの対象者は、有効なアトピー性皮膚炎に対する治験担当医師の総合評価(Investigator's Global Assessment for Atopic Dermatitis;IGA)が3(中等度)または4(重度)で、スクリーニング時およびベースライン時の両方で患部体表面積が10%以上で、外用薬の効果が不十分、または外用薬の治療が臨床的に不十分だったという既往(1年以内)があった。
■ 患者は、4週ごとにロカチンリマブ(150mgまたは600mg)を皮下投与する群、2週ごとにロカチンリマブ(300mgまたは600mg)を皮下投与する群、18週間までプラセボを皮下投与する群にランダム化され(1:1:1:1:1)、18週間の治療と20週間のフォローが行われた。
■ 試験開始時からのEASI変化率を主要評価項目とし、ランダム化された全患者について、試験開始後のEASIが16週目またはそれ以前に試験薬を使用した患者を対象に、16週目および延長期間中と追跡期間中に評価した。
■ 安全性は、無作為に割り当てられた試験薬投与患者全員を対象に評価し、患者は無作為に割り当てられたグループごとに分析した。
■ 本試験はClinicalTrials.gov(NCT03703102)に登録されている。
結果
■ 2018年10月22日から2019年10月21日に、患者274例(女性114例[42%]、男性160例[58%]、平均年齢38歳[SD 14.5])をロカチンリマブ群(217例[79%])またはプラセボ群(57例[21%])のいずれかに無作為に割り付けた。
■ 16週目におけるEASIスコアの有意な最小二乗平均において、全てのロカチンリマブ群で低下し、プラセボ群(-15.0[95%信頼区間-28.6~-1.4])と比較しても有意だった。
■ すなわち、ロカチンリマブ150mgを4週間ごとに投与した群が-48.3[-62.2~-34.0](p=0.0003); ロカチンリマブ600mgを4週ごとに投与した群 -49.7[-64.3~-35.2](p=0.0002); ロカチンリマブ300mgを2週ごとに投与した群 -61.1-75.2~-47.0、ロカチンリマブ600mgを2週ごとに投与した群 -57.4[-71.3~-43.4](p<0.0001)だった。
■ ロカチンリマブ投与群で二重盲検期間中に最も多くみられた有害事象(ロカチンリマブ投与群全体の患者の5%以上でプラセボ投与群よりも多かった有害事象)は、発熱(36例[17%])、鼻咽頭炎(30例[14%])、悪寒(24例[11%])、頭痛(19例[9%])、アフタ性潰瘍(15例[7%])、悪心(13例[6%])だった。
■ この観察期間中に死亡例はなかった。
解釈
■ ロカチンリマブで治療された患者は、アトピー性皮膚炎が進行性に改善し、それは治療中止後もほとんどの患者で維持された。
■ 治療の忍容性は良好だった。
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