『衛生仮説』は、衛生的な環境に育った子どもはアレルギー疾患のリスクが高まる可能性があるという仮説。
■ 『衛生仮説(hygiene hypothesis)』とは、1989年にロンドン大学セントジョージ医学校のデイヴィッド ストラカン教授が提唱した仮説です。
■ ストラカンは、1953年生まれの英国の子どもを検討し、上のきょうだいのいる子どもほどアレルギー疾患の発症率が低くなる傾向があることが示し、衛生的な環境に育った子どもは免疫系の発達に必要な刺激を受ける機会が少なくなり、アレルギー疾患のリスクが高まる可能性があることを指摘したのです。
■ 最近、この『きょうだいの数とアレルギー疾患の発症リスク』に対するメタアナリシスが公開されていました。
Lisik D, Ermis SSÖ, Ioannidou A, Milani GP, Nyassi S, Spolidoro GCI, et al. Birth order, sibship size, and risk of atopic dermatitis, food allergy, and atopy: A systematic review and meta-analysis. Clinical and Translational Allergy 2023; 13:e12270.
アトピー性皮膚炎、食物アレルギーとアレルギー、そして出生順位や兄弟姉妹の数との関連性について検討した計114研究に関するメタアナリシスを実施した。
背景
■ アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは、アレルギー疾患のある状況下で、しばしば同時に見られる二つの症状である。
■ アトピー性皮膚炎、食物アレルギーとアレルギー、そして出生順位や兄弟姉妹の数との関連性については、既に多数の研究結果が報告されている。
■ この研究は、このトピックに関して既存の文献を初めて系統的に統合する試みである。
方法
■ 15のデータベースを検索した。
■ スクリーニング、データの抽出、質的評価は独立した二つのチームが行った。
■ そして、比較可能な数値データを統計的に統合するために、ランダム効果ロバスト分散推定を利用した。
結果
■ データベースの検索結果から得られた8819の論文の中から、計114研究が分析に含まれた。
■ 出生順位が2以上か1かという比較では、アトピー性皮膚炎の既往歴(プールリスク比[RR]0.91、95%CI 0.84-0.98)、食物アレルギーの既往歴(RR 0.77、95%CI 0.66-0.90)、一般的なアレルゲンに対する皮膚プリックテスト(SPT)陽性(RR 0.86、95%CI 0.77-0.97)は、出生順位が2以上の場合の方がリスクが低かった。
■ 兄弟姉妹の数が2人以上か1人かという比較では、現在のアトピー性皮膚炎(RR 0.90、95%CI 0.83-0.98)、過去のアトピー性皮膚炎(RR 0.92、95%CI 0.86-0.97)、一般的な吸入アレルゲンに対するSPT陽性(RR 0.88、95%CI 0.83-0.92)は、兄弟姉妹の数が2人以上の場合の方がリスクが低かった。
■ しかし、一般的なアレルゲンに対するアレルゲン特異的免疫グロブリンE(IgE)によるアトピー評価については、関連性は認められなかった。
結論
■ 兄弟姉妹が存在し、また第2子以降であることは、アトピー性皮膚炎および食物アレルギーの生涯リスクを僅かに減少させる可能性があるという結果が得られた。
■ SPT感作でも同様の関連性が見られた。
■ しかしながら、IgE感作については有意な予防効果は認められなかった。
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