タピナロフ:昆虫研究から皮膚病治療へ
■ カナダの研究者たちが1990年代に、ある種の線虫は、昆虫を急速に死亡させるけれども、昆虫がすぐに腐らない理由を発見しました。
■ この線虫は、細菌Photorhabdus luminescensと一緒に生活しており、昆虫に感染するとこの細菌が昆虫の体内で増殖します。
■ 研究者たちは、細菌が生み出す特定の分子(のちにタピナロフと呼ばれることになります)が、昆虫の腐敗を遅らせる原因であることを突き止めました。
■ このタピナロフ、アトピー性皮膚炎や乾癬にも有効であることがわかっています。
■ そこで、最近の2bフェーズ試験を確認しましたので共有します。
Paller AS, Stein Gold L, Soung J, Tallman AM, Rubenstein DS, Gooderham M. Efficacy and patient-reported outcomes from a phase 2b, randomized clinical trial of tapinarof cream for the treatment of adolescents and adults with atopic dermatitis. J Am Acad Dermatol 2021; 84:632-8.
青年・成人のアトピー性皮膚炎患者247例に対し、タピナロフクリーム0.5%、1%、またはプラセボを1日1回または2回、12週間投与し、4週間追跡調査を行う二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。
背景
■ タピナロフは、アトピー性皮膚炎(AD)や乾癬の治療薬として開発されている局所治療薬で、アリール炭化水素受容体を調節する作用を持つ。
方法
■ 第2b相の二重盲検、プラセボ対照試験で、青年及び成人のアトピー性皮膚炎患者にタピナロフクリーム0.5%、タピナロフクリーム1%、プラセボを、1日1回または2回、12週間投与し、4週間の追跡調査を行った。
■ 主な評価項目は、Investigator Global Assessment (IGA)、湿疹面積及び重症度指数(EASI)、Eczema Area and Severity Index (EASI)、湿疹のある体表面積(BSA)、そう痒数値評価尺度スコア、患者のADに対する印象、そう痒症症状の重症度、Patient-Oriented Eczema Measure (POEM) スコアなどである。
結果
■ 全体で、ランダム化された247例のうち191例が試験を完了した。
■ 12週目におけるIGAの改善反応はタピナロフ群がプラセボ群に比べて高く、特にタピナロフ1%を1日2回投与した群で統計的に有意な差が見られた。
■ EASIスコア75%以上・90%以上の改善は、タピナロフ群(0.5%を1日1回及び1日2回投与した群を除く)で有意に多く見られ、全てのタピナロフ群でEASIスコアは有意に改善され、湿疹体表面積もタピナロフ群(0.5%を1日2回投与した群を除く)で有意に減少した。
■ タピナロフ群ではADと痒みの重症度が大幅に・中程度に改善した患者が多く、POEMスコアの改善も全群で見られた。ほとんどの副作用は軽度または中等度だった。
限界
■ この研究の結果を確認するには、さらに大規模な前向き研究が必要である。
結論
■ タピナロフは、アトピー性皮膚炎治療の新たな外用薬開発において、重要な進歩である可能性が示唆されている。
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