Chittock J, et al. Comparing the Effect of a Twice-weekly Tacrolimus and Betamethasone Valerate Dose on the Subclinical Epidermal Barrier Defect in Atopic Dermatitis. Acta Derm Venereol 2015; 95:653-8.
ステロイド外用薬とプロトピックを比較したランダム化比較試験は貴重です。
■ ステロイド外用薬は、皮膚の菲薄化(薄くなること)など、毎日塗り続けると副作用が懸念されます。
■ 一方、タクロリムス(プロトピック)外用はそのような副作用は少ないとされていますが、ステロイド外用薬との比較研究がありました。
E: タクロリムス(0.1%)外用薬(TACo; 本邦での商品名 プロトピック軟膏)週2回 2FTU/回塗布 8週間 前腕内側・屈曲部下3cm部位
C: 同様の部位に同様の期間 吉草酸ベタメタゾン(0.1%)クリーム(BMVc; 本邦での商品名 リンデロンクリーム)塗布 週2回2FTU塗布8週間
O: 経皮的水分蒸散量(TEWL)、pH
結果
■ BMVc(リンデロンVクリーム)群は19.39 ± 6.33 g、TACo(プロトピック)群は17.11 ± 5.69 gの外用薬を使用した。
■ TACo群は、ベースラインに比べTEWL(経皮的水分蒸散量=高いほうがバリア機能が低いことを示唆)が有意に低下し(59.99±5.13g/m2/h→45.54±3.94g/m2/h)、プロテアーゼ活性が有意に減少した(Caseinolytic活性; 4.73±0.23μnU/g→4.21±0.27μnU/g、trypsin-like プロテアーゼ活性;1.20 ± 0.12 nU/μg→1.20±0.12μnU/g)。
■ BMVc群では、角質層機能に有害な影響は及ぼさなかったが、有意に皮膚pHを上昇させた。
論文より引用。 BMV群(リンデロンV)とUntreated群(対照)のTEWLに差はないが、TACo群(プロトピック)にはTEWLに有意差がある(=TACo群のほうがTEWLが低い≒バリア機能が改善している)
リンデロンVを週2回8週間塗っても皮膚のバリアは低下しない。プロトピックはむしろ皮膚のバリアが回復してくるようだ。
■ 以前、毎日1日2回連日で4週間塗布のランダム化比較試験をご紹介しました。
■ 今度は週2回を8週間です。抗炎症薬の長期連用に関し、リンデロンクリーム外用よりプロトピック軟膏塗布を支持する論文と言えます。
■ リンデロンVとプロトピックを直接比較した研究は珍しく、前日の論文とあわせて、ステロイド外用の連日は避け、ステロイド外用薬は間欠塗布にするべきと考えられます。
■ ただ、この論文の本文にも記載がありますが、プロトピックの効果は基剤であるワセリンの効果である可能性に留意を要します。最近、ワセリンのみでもそれなりの効果があることが示されています。
■ どちらにせよ、プロアクティブ治療も重要で週2回のステロイド外用薬はおおむね安全といえるでしょう。
■ しかし、ステロイド外用薬を減量していくことと、皮膚状態を早めに安定させプロトピック外用薬へ変更し、保湿剤中心にできるように治療していくことはとても大事であると考えています。長期連用に関してのシステマティックレビューも最近報告されました。
■ なお、TEWLに関してご存じない先生は、まとめましたのでご確認ください。