軽症の呼吸器感染に対して抗生剤を予防的に使用する意味はあるか?

2017年6月1日

Gulliford MC, et al. Safety of reduced antibiotic prescribing for self limiting respiratory tract infections in primary care: cohort study using electronic health records. Bmj 2016; 354:i3410.

風邪への抗生剤使用制限は、耐性菌対策への大きな課題。

■ 「風邪に抗生剤は効かない」に異論をはさむ医療者は少ないでしょう。

■ 風邪そのものは一般的なウイルスが原因であり、抗生剤は効果がないからですが、一方、「こじれるといけないから」抗生剤を処方するケースは多々見受けられます。

■ 実際はどれくらい「予防」しているのでしょう。

 

P: 英国のClinical Practice Research Datalink 610施設 2005年から2014年まで4500万人/年

E: 一般診療における、抗生物質を使用した、self-limitedな(治療をしないでも症状が治まる)気道感染症(RTIs)診療の標準比率、登録された患者1000人ごとのRTIsに対する抗生剤処方比

C: –

O: 肺炎、扁桃周囲膿瘍、乳様突起炎、蓄膿症、髄膜炎、頭蓋内膿瘍、ルミエール症候群の発生率

 

 

結果

■ 2005年から2014年までに、抗生物質が処方されたRTI(治療をしないでも症状が治まる気道感染症)の率は、男性において53.9%から50.5%、女性において54.5%から51.5%に減少した。

■ その間、髄膜炎、乳様突起炎、扁桃周囲膿瘍の新規発症は、1年ごとに5.3%、4.6%、1.0%それぞれ減少したが、肺炎新規発症は0.4%増加した。

■ 年齢と性で調整した肺炎と扁桃周囲膿瘍の発生率は、抗生剤が投与された上位4分の1群に比較して、下位4分の1群のほうが多かった。

抗生物質処方を10%削減すると、修正相対危険度(RR)が、肺炎で12.8%(95%信頼区間7.8%~17.5%、P < 0.001)、扁桃周囲膿瘍で9.9%(5.6%~14.0%、P < 0.001)上昇した。

■ 抗生剤処方が10%削減する場合、RTI(治療をしないでも症状が治まる気道感染症)7000例に対し毎年肺炎1.1人(95%信頼区間0.6~1.5)、10年毎に扁桃周囲膿瘍が0.9人(0.5~1.3)増加する可能性がある。

■ 一方、乳様突起炎、蓄膿症、髄膜炎、頭蓋内膿瘍、ルミエール症候群は、処方が少ない群と多い群で頻度に差はなかった。

 

軽い感染症に対して抗生剤を使用すると、7000人に抗生剤を投与して、「治療可能な」肺炎や扁桃周囲膿瘍を約1名減らす。

RTI(治療をしないでも症状が治まる気道感染症)に対して抗生物質を削減すると、肺炎と扁桃周囲膿瘍の発生率をわずかに増加させる可能性があり、乳様突起炎、蓄膿症、細菌性髄膜炎、頭蓋内膿瘍、ルミエール症候群は増加させる可能性は低いとまとめられます。

しかし、その効果は極めて少なく、7000人に投与して、「治療可能な」肺炎や扁桃周囲膿瘍を約1名減らす程度といえます。

■ ただし、現実問題、細菌感染とウイルス感染をクリアカットに鑑別する方法がない以上、ある程度は許容せざるを得ない場面もあると私は思っています(抗生剤処方での不利益に関し、説明努力を続ける必要性があります)。

■ 「風邪に抗生剤は無意味」というのは、すべての医療セッティングに合う話とはいえないかもしれません。私は、かなり抗生剤の使用が少ない方と思いますが、例えば、夜間の救急外来で、採血などをするためのマンパワーが少ない場合はあえて抗生剤の使用するケースもあります(それでも抗生剤は絶対ダメだ!とおっしゃる方もいるかと思いますけど)。

■ 一方で、広域抗生剤はきわめて限定的なセッティングでしか処方しません。

■ もちろん、抗生剤そのものでアレルギーを起こす可能性、下痢などの副作用をきたす可能性もあり、その他、アレルギー発症のリスクなどもあり、やはり多くの場合は抗生剤投与のメリットは極めて限定的といえます。

■ これらのリスクや効果をコンパクトにお話しながら、抗生剤の使用量を減らしていくというのがよりよい未来かなと思っています。